2018年の日本人の平均寿命は、男性が81. 25歳、女性が87.32歳と過去最高を記録した(厚生労働省「簡易生命表」)。医学の進歩もあり、今後さらに寿命が延びる可能性は高いとされている。
しかし、誰もが長生きできるとは限らない。100歳を過ぎても元気な人もいれば、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞を起こしてしまう可能性もある。その“差”はどこから生まれるのか──。持病や遺伝的要因、生活習慣など複合的な要素が絡んでくるが、見逃せないのが「食事がもたらす病気リスク」だ。
食事が健康長寿に及ぼす影響を示した世界規模の研究結果が、今年4月、英国の権威ある医学誌『ランセット』に掲載された。
日本を含む世界145か国以上から3600人を超える専門家が参加した「世界の疾病負担研究(GBD)」という国際研究チームが、1990年から2017年まで350種類以上の病気やけがによる死亡・障害についてのデータを収集・分析した。
今回の研究では、食事が死者をどの程度増やす原因になったかを推計した。その結果、2017年に「不健康な食事」の影響で亡くなった人は、全世界で約1100万人に上ることが分かったのだ。元ハーバード大学研究員で、ボストン在住の内科医である大西睦子医師が指摘する。
「1100万人は、この年に死亡した全成人の5人に1人に相当します。食事を原因とする死亡で最も多かったのは心血管系の疾患によるもので、がんと2型糖尿病がそれに続きました」
1996年に米ハーバード大が発表した研究でも、がんを引き起こす原因は「食事」が全体の30%を占め、トップだった。がんの原因とされることの多い「遺伝」は5%しかなく、日々の食生活が健康に与える「負の影響」がいかに大きいかを示している。
※週刊ポスト2019年12月13日号