血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が多くなりすぎてしまう高脂血症(脂質異常症)は、放置していると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす。
治療にはLDLコレステロールを下げる薬が用いられることが多く、厚労省が所管するPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に服用後の死亡例が報告された高脂血症治療薬は、肝臓・小腸でコレステロールが生成されるのを防ぐ作用を持つものが多い。このタイプは、有効成分名に「~~スタチン」とつくことから「スタチン系」とも呼ばれる。銀座薬局の薬剤師・長澤育弘氏が解説する。
「スタチン系の高脂血症治療薬は、副作用として横紋筋融解症を引き起すケースがあります。これはその名の通り筋肉が溶ける病気で、溶けた筋肉の成分が腎臓に詰まると死に至ることがある」
高脂血症治療薬のなかで処方量が最も多い「クレストール(有効成分ロスバスタチン)」や「リピトール(同アトルバスタチン)」がスタチン系にあたる。
「『クレストール』は初期段階にも使われる薬です。これを服用し死亡した70代男性のケースは、身長が150cm台、体重が50kgと、小柄で比較的痩せていた。薬が効きすぎてしまったことが原因かもしれません。
一方、『リピトール』は強い薬なので、服用後の横紋筋融解症が複数例報告されているのではないでしょうか」
PMDAに報告された症例を見ていくと、長期間にわたって高脂血症治療薬を服用した後、横紋筋融解症を発症しているケースが存在することがわかる。「リピトール」を服用していた60代男性のケースでは、服用開始から約1年3か月が過ぎたところで横紋筋融解症などを発症し、死亡している。