「AMERICAN HERO!」(米国の英雄!)──米国のトランプ大統領が自身のツイートでそう絶賛した米軍の功労者をホワイトハウスに招き、栄誉を称える勲章と楯を贈呈したのは11月25日。その栄えある場に登場したのは「軍人」ではなく、首輪とリードをつけた「軍用犬」、その名もコナンだった。
今年10月下旬に米軍がシリア北西部で実行した過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者急襲作戦で、潜伏先を襲われてトンネルに逃げ込んだ同容疑者を追ったのは、コナンら軍用犬だった。追い詰められた同容疑者は、着用していた自爆用ベルトを爆発させて死亡した。
あのバグダディを追い詰めるなんて、いったいどんな犬なのか──そんな疑問を持った筆者は、東京都江戸川区にある東京コミュニケーションアート専門学校ECOを訪れた。動物にかかわる仕事について学ぶ同校では、カリキュラムの一環として、英雄犬コナンと同じ犬種「ベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノア」のエリカ(メス、5歳)を飼育しているという。
緊張する筆者の前に現れたのは、細身ですらりとしたシルエットながら、なかなかの迫力が滲み出ている「エリカ様」だった。“テロリストを追い詰めた勇猛果敢な犬種だから、下手な動きをしたらガブリといかれるかも”──そんな先入観を拭えず、恐る恐る近づいてそっと顔をなでると、エリカは嫌がることなく応じてくれた。
ひとしきり撫でた後はお互いにどうすればいいかわからず微妙な間が生まれたが、少なくとも犬と人間の相互理解に向けての確かな一歩は感じ取れた。
エリカのリードを持つのは、同校ペットワールドドッグトレーナー専攻2年生の望月聖来さん。「今日のエリカはちょっと緊張気味ですね」とにこやかに語る。
「私が入学して最初に見たときからエリカは先輩に懐いていて、穏やかで優しそうな子だなぁと思いました。ただ警戒心が強くて、ちょっと男性が苦手な面があるかも(苦笑)。基本的に人見知りなので、はじめましての人には緊張しますね。いまもそうです」