ライフ

【与那原恵氏書評】沖縄の課題を考えさせられる琉球史考

『旅する琉球・沖縄史』真栄平房昭・著

【書評】『旅する琉球・沖縄史』/真栄平房昭・著/ボーダーインク/1800円+税
【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 取材のため那覇に滞在していた早朝、首里城焼失を知らされた。私は首里生まれの父から戦前の城の様子を聞いて育ったのだが、初めて沖縄に行った一九七一年(「本土復帰」の前年)の首里城敷地には琉球大学校舎が建っていた。

 その翌年、写真展「50年前の沖縄」が開催され、父と一緒にサントリー美術館(東京)に行った。撮影したのは、大正末期から昭和初期にかけて断続しながらも十六年に及ぶ「琉球芸術調査」をした鎌倉芳太郎だった。

 彼は八十一冊のフィールドノート、あまたの古文書とともに、千数百点のガラス乾板写真を残していた。琉球の面影を伝えるモノクロ写真は圧倒的な迫力で、首里城や首里一帯の光景につよく魅せられた。八二年に琉球大学のキャンパスが移転したのち、首里城復元事業が本格的に始動した。復元にあたっては鎌倉の資料も活用され、「赤い城」がよみがえったのだった。

 今回の焼失は涙がこぼれるばかりだが、全国から多くの支援が寄せられていることをありがたく思う。復元から二十七年を経て、首里城は沖縄だけの文化財ではないことを実感した。この支援は、小国琉球がアジア諸国と交流し、独自の文化を築いた、その歴史への共感でもあるのではないか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
「田原俊彦、植草克秀を収録済み」中居正広『だれかtoなかい』が早期打ち切り危機…空白埋める「毒舌フリーアナ」
NEWSポストセブン
新年一般参賀では、午前と午後合わせて5回、宮殿のベランダに立たれた(2025年1月、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)
一筋縄ではいかない愛子さまの結婚問題 お相手候補に旧宮家の男系男子を推す声がある一方、天皇陛下が望まれるのは“自然に惹かれ合った形で”
女性セブン
2024年12月13日の事始め式では青いストールを巻いて現れた
《六代目山口組・司組長のファッションに注目集まる》原点は「チョイワル」コーディネート、海外高級ブランドを外商で取り寄せ、サングラスは複数用意して全身グッチ
NEWSポストセブン
巨人入団が決まった田中将大(時事通信)
巨人入りの田中将大は200勝達成できるか 平松政次氏「10勝できる」江本孟紀氏「申し訳ないけど3つ勝つのも大変」【2025年のプロ野球界を占う】
週刊ポスト
中居正広の女性トラブルに全く触れないテレビ局 
中居正広の深刻トラブルに全く触れないテレビ局 ジャニー氏性加害問題で反省したはずなのに…騒動が風化するのをじっと待つ“不誠実”
女性セブン
乗客乗員181人のうち179人が死亡するという韓国の旅客機事故で最大の被害となった
韓国機事故で179名が死亡、2人の生存者が座っていた“生還しやすい座席” 相対的には「前方より後方」「窓側より通路側」「非常口付近」
女性セブン
一生に一度の思い出の晴れ着になるはずだった(写真提供/イメージマート)
《「二十歳の集い」晴れ着トラブル》各地で発生していたヤンキー衣装を巡るトラブル「サイズが合わないピンク色の袴を強制」「刺繍入り特攻服を作らされた」
NEWSポストセブン
現在
《3児の母親となった小森純》「社会に触れていたい」専業主婦から経営者を選んだ意外な理由、タレント復帰説には「テレビは簡単に出られる世界じゃない」
NEWSポストセブン
サプライズでパフォーマンスを披露した松本(左)と稲葉(「NHK紅白歌合戦」の公式Xより)
B’z紅白初登場「7分54秒の奇跡」が起きるまでの舞台裏 「朝ドラ主題歌以外は好きな曲で」のオファーに“より多くの人が楽しめるように”と2人が選曲
女性セブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
《スクープ続報》中居正広、深刻女性トラブルの余波 テレビ局が収録中止・新規オファー取りやめ、『だれかtoなかい』の代役にはSMAPメンバーが浮上
女性セブン
俳優
《第1子男児誕生の仁科克基》「僕は無精子症でした…」明かした男性不妊の苦悩、“心も体も痛い”夫婦で乗り越えた「妊娠18カ月生活」
NEWSポストセブン
「海老名きょうだい3人死亡事件」の犯行現場となった一家の自宅
《海老名きょうだい3人死亡事件》子煩悩だった母が逮捕 残された父が重い口を開いた「妻は追い詰められたんだと思います」「助けられなかった」…後悔の念
女性セブン