厚労省が11月29日に発表した「インフルエンザの発生状況」によると、全国約5000の医療機関での患者数は1万5000人を超えた。休校や学級閉鎖などがあった施設は1925を数える。例年のインフルエンザ関連の死者数は年間1万人程度と推定される。
今季、流行しているインフルエンザウイルスは、A型の一種「H1N1型」だ。2009年に新型インフルエンザとして大流行して以降、予防接種ワクチンが開発された。A型は、他のB型やC型に比べて激しい症状が出るという特徴を持つ。
どの型が流行するかは国や地域、年ごとに異なるため、ワクチンの種類はWHOの流行型の予測をもとに国立感染症研究所が毎年決定し、供給している。予防接種の正しい受け方とは。
◆予防接種を受ければ感染しないのか?
意外と知られていないのは「予防接種は『感染』を防げない」という事実だ。日本感染症学会インフルエンザ委員会委員で東京病院統括診療部長を務める永井英明医師が解説する。
「インフルエンザの『感染』とは、ウイルスが口や鼻から体内に入り増殖する状態を指します。感染後、体内でウイルスが増えると数日の潜伏期間を経て発熱やのどの痛みなどの症状が出た状態が『発病』です。予防接種のワクチンでは、この『発病』を60%程度抑える効果があるという研究結果が出ていますが、『感染』を防ぐことはできません」
“予防接種を受けたのに罹った”という不満が上がるのはそういう理由がある。
それでも予防接種が推奨されているのは、発病後の重症化を防ぐためだ。
「とくに65歳以上の高齢者はインフルエンザを発病後、肺炎を合併して入院や死亡につながるケースが多い。インフルエンザワクチンと同時に肺炎球菌ワクチンの予防接種も受けると、単独での接種より入院・死亡のリスクが減るという研究結果があります」(永井医師)