インフルエンザウイルスは「接触」や「飛沫」によって感染するが、意外と知られていないのは、「予防接種は『感染』を防げない」という事実だ。
日本感染症学会インフルエンザ委員会委員で東京病院統括診療部長を務める永井英明医師が解説する。
「インフルエンザの『感染』とは、ウイルスが口や鼻から体内に入り増殖する状態を指します。感染後、体内でウイルスが増えると数日の潜伏期間を経て発熱やのどの痛みなどの症状が出た状態が『発病』です。予防接種のワクチンでは、この『発病』を60%程度抑える効果があるという研究結果が出ていますが、『感染』を防ぐことはできません」
予防接種を受けても感染・発病を完全に防げるわけではない以上、マスク着用など日頃の対策が重要になる。新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師が正しいマスクの着け方についてアドバイスする。
「市販の不織布のマスクは、鼻やあごの下に隙間ができやすく、予防効果が高いとは言えません。よく『マスクを着けると眼鏡が曇ってしまう』と敬遠する人がいますが、眼鏡が曇るのは空気がマスク内に出入りしているからで、予防できていないしるしなのです。
そこで私はマスクを二重にするよう勧めています。内側にガーゼのマスクを、外側に市販のマスクをして隙間を埋める。単独使用に比べて会話中の唾液やくしゃみ等で漂うウイルスの予防効果が期待できます」