「ももクロとしての目標が増えました。“リニア全駅ツアー”をやりたいです!」
そう語ったのはアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のリーダーで、女優としても活躍中の百田夏菜子さん(25)。JR東海の山梨リニア実験線を訪れ、「超電導リニア」の体験乗車を終えた際に発した一言だ。
乗車前のレクチャーでは、最高時速500キロで走るリニア中央新幹線について、2027年に品川~名古屋間が開業して最速40分で結ばれることや、沿線の神奈川、山梨、長野、岐阜に新駅が作られる予定であること、その後に大阪まで延伸すると品川~大阪間が最速67分になることなどが説明された。
「すごい!」「早くできないかな~」「早く乗りたい!」──レクチャーが終わり、ワクワクする気持ちを抑えきれない様子の百田さん。搭乗口に立ち、いよいよリニアの車内へと足を踏み入れる瞬間。後ろの取材スタッフを振り返り、こう笑顔で語った。
「未来への一歩、踏み出したいと思います!」
「私、いま飛んでいます!」
百田さんは客室内へ。シートに着いたところで第一印象を聞くと、「とてもスマートですね。座った感じは、いつもの新幹線に近いです」。車内アナウンスが流れ、発車時刻となった。超電導リニアは、走り始めはタイヤで走行し、時速150キロ程度まで加速するとタイヤを収納して浮き、さらに加速していく。タイヤが収納された瞬間、気付きましたか?
「浮いて、静かになりました。私、いま飛んでいます!(時速300キロを超えて)もう新幹線よりも速いのに、そんなに速く走っていると感じないくらいスムーズ。でも、窓から外を見るとめちゃくちゃ速いです。
え! もう時速500キロですか? 乗り心地は新幹線と変わらなくて、安定していますね。カーブも登り坂も、言われるまで気が付かなかったです」
その後、減速して時速400キロ、300キロと速度を落としていく。500キロに比べたらすごく遅くなったように感じるが、それでも新幹線より速いスピードだ。
「スピード感覚が麻痺しています(笑)。トンネルから出たところで見える甲府盆地の景色はとても綺麗ですね。こんなふうに乗ることができるってことは、本当にリニアの完成が近付いているということですよね」
山梨リニア実験線は総延長42.8キロに及ぶ。リニア中央新幹線の開業後も利用されることになっており、全線の約7分の1は建設されていることになる。着々と完成に近付いているリニア中央新幹線だが、研究開発がスタートしたのは、東海道新幹線の開業より2年前、1962年なのだ。
「研究開発が始まったのは東海道新幹線が走る前なんですか? そんなに前から始まっていたとはビックリです! 当時は、今よりずっと未来が見えなかったはずだと思います。それにもかかわらずコツコツと研究を続ける時間は、考えただけで大変だと思います。未来が見えない中、実験を諦めることなく続けてくれたことに、本当に感謝したいです。未来を想像することって大事なんだな、と実感しました」
「モノノフのみんなにも伝えたい」
「もっと乗っていたい!」と名残り惜しそうにしながら体験乗車を終えた百田さんと打ち合わせルームに戻り、あらためて感想を聞いた。
「“リニアが本当に走る時代”が来たということを体験させてもらい、『夢が現実になる瞬間』を味わうことができました。そんな機会は、私が自分の夢を追っているときでも滅多にないことです。気を緩めたら涙が出そうになるほど、実は感動していました。
リニアは本当に速かったです。速すぎて、今までウトウトしていた移動時間がなくなり、仕事がはかどりすぎて困るかも……(笑)。でも、すごく効率的に日常を楽しむことができるので、1日をもっと充実させられそう。スケジュールの組み方も変わってきますね。もし開業したら、1日で2県、3県でのライブができそうですよね。午前中は山梨でライブをして、その後に長野、岐阜でもライブをしても夜は東京に帰れますよ(笑)。
そうだ、日本で最初に、リニアを使ってライブツアーをやりたい! 帰ったら、ももクロのメンバーに『グループの目標が増えました。“リニア全駅ツアー”をやります』と報告したいです(笑)。絶対、みんなもこの案に乗ってくれると思うし、楽しみにしてくれると思います。
そして、そんなライブができるかもしれないよ、とモノノフ(ももクロのファンを指す言葉)のみんなにも伝えたいです」
百田さんがリーダーを務めるももクロは、「いま、会えるアイドル」をキャッチフレーズに2009年にデビューして以来、国内外でのライブ活動に力を入れてきた。これまでに全国47都道府県ツアーや、「ももクロ春の一大事」と題して地方自治体とコラボしたライブイベントなどを実現。都市間を高速で繋ぐことにより、face to faceのコミュニケーションを加速させる可能性をもつリニア中央新幹線は、全国のモノノフたちと「直接会うこと」を大事にしてきたグループのコンセプトに通じるものがあるという。
「コミュニケーションの手段は色々ありますが、ライブでファンのみんなと直接会うことは、ほかと比べて全然違うんです。みんなの反応を生で見られる喜びは大きくて、会える機会は特別なので、これからも大事にしていきたい。
47都道府県ツアーは2年がかりでした。そこで実感したのは、いざ巡ろうと思うと『日本は大きい』ということ。知らない場所もたくさんありました。リニアが開業して、もっと手軽に日本中に行けるようになったらいいな、と思います。ライブに来たくても来られていなかったモノノフの皆さんにも、ぜひ遊びに来てもらいたいです」
「また静岡から通えるようになれたら」
実は、乗車前、百田さんはJR東海のリニア中央新幹線サイトに掲載されている動画「リニア中央新幹線と日本の未来」の【静岡編】を視聴していた。
動画はリニア開業後の日本が舞台で、【静岡編】の主人公は東京から地元・静岡にUターンした男性会社員。リニア全線開業により「のぞみ」の役割がリニアに移ることで、東海道新幹線のひかりやこだまの本数が増え、新幹線通勤がしやすくなり、仕事はもちろん、家族とのプライベートも豊かに過ごせるようになった──そんな近未来の世界が描かれている。
*百田さんが視聴した動画は、本稿末尾で視聴可能
リニア中央新幹線の開業が日本にもたらす変化は、品川と名古屋・大阪方面が“近くなる”だけではない。大阪までの全線開業後には、現在の東名阪等を速く結ぶ使命をもつ「のぞみ」中心のダイヤから「ひかり」「こだま」の増発余地が増え、静岡や浜松など現在の「ひかり」「こだま」停車駅の利便性が大きく向上することになるのだ。
百田さん自身、芸能界デビューしてから何年もの間、仕事や高校通学のために、実家のある静岡県から東京まで毎日のように新幹線を利用していた。
「当時はひかりの始発と終電に乗るために、毎日のように走っていました。1本乗り遅れると大変だから、『もっとひかりの本数があったらいいのに』と思うことも多かったんです(笑)。プライベートで友達と遊んでいる時でも、『そろそろ新幹線の時間だから、先に帰るね』って言ったり。リニアが開業したらひかりやこだまが増えてもっと便利になるなんて、夢みたいです」
直近ではラグビーワールドカップ2019日本大会で静岡の開催都市特別サポーターを務めるなど、百田さんと地元・静岡のつながりは今も深い。「理想は、静岡の実家に住んで、そこから仕事に通うことです」と百田さんは言う。
「私、地元が大好きなんです。リニアが完成したらまた静岡に住めるかもしれないですね!私の周りにも、東京や大阪などの大都市に出ないと自分のやりたいことができないから、という理由で地元を離れる友達がたくさんいました。それが“通い”でできるようになったら、みんなが居たい場所にいて好きなことがもっとできるようになって、すごくいいと思います。私の周りで静岡に再び住む友人は絶対にいると思います! 家族一緒に居られる時間が長くなるし、自分のふるさとに居ながら仕事ができたら、こんなに幸せなことはありません。
開業に向けて準備を進めている最中ですが、リニアを作り上げてきた人たちには本当に感謝したいです。開発者や技術者の皆さんが周囲の期待を背負いながら諦めずに頑張ってくれたからこそ、未来が現実となってきたんですね」
リニア車両を降りる際、「未来から現実へ戻りたくないです!」と笑顔で語っていた百田さんの興奮は、しばらく冷めることはなさそうだ。
↓百田さんが視聴した動画はこちら
↓さらに詳しい情報はこちら。「リニア開業後の未来」を描いたムービーは他にも公開中!
◆JR東海