近年は食事の際に米を抜く「糖質制限」や「減塩」こそが健康長寿に不可欠とされてきた。しかし、そんな定説を覆す研究結果がNHKスペシャルで紹介され、議論を呼んでいる。
「糖質こそが人間の活動で最も重要なエネルギー源です。それを制限することは、深刻な病気リスクの高まりを意味します」
そう語ったのは、米シモンズ大学教授のテレサ・ファン博士。ハーバード公衆衛生大学院でも非常勤教授を務める彼女の研究は、11月24日に放送されたNHKスペシャル『食の起源 第1集「ご飯」』で紹介されて大きな反響を呼んだ。
シモンズ大学が13万人の食生活と健康状態を20年以上追跡調査し、普段の食生活で糖質の摂取量が標準的な人(総カロリーの60%が糖質)と、とくに少ない人(総カロリーの35%が糖質)を比べると、後者の死亡率が1.3倍以上に高まった。
そもそも、糖質制限には高血糖を招く原因となる糖質を減らすことで糖尿病を予防する効果が期待されてきた。しかし、このことにも疑問符が付き始めている。
糖質制限ブームもあって2002~2014年の12年間で日本人の糖質摂取量は一日平均で15g減ったが、糖尿病患者はおよそ100万人増加した。この矛盾は、「糖尿病のパラドクス」と呼ばれる。