諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は長年、日本でだけでなく、チェルノブイリやイラク、シリアなどへの医療支援活動も続けている。鎌田医師が代表と事務局長をつとめるJIM-NETでは2004年に結成された翌々年、2006年から毎年、11月中旬~1月末頃に「チョコ募金」を行ってきた。15回目を迎えた「チョコ募金」の缶に込められたメッセージについて、鎌田医師がつづる。
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ようやく沈静化しかかった中東に、再び不穏な空気が漂っている。
トルコ軍が、クルド人の多いシリア北部を攻撃した。きっかけは、10月6日に行なわれたトルコのエルドアン大統領と米国トランプ大統領の電話会談だった。
クルド人は、約3000万人がトルコやシリア、イラク、イランなどにまたがって暮らしている。自らの国家をもたない最大の民族といわれ、独立を悲願としている。
先の、テロ組織「イスラム国」との闘いでは、アメリカをはじめとする有志連合国の後押しで、クルドの武装勢力YPG(クルド人民防衛隊)が大きな役割を果たした。この見返りに、今度こそ独立できるのではないかとの機運が高まったが、突然のアメリカの撤退で、はしごを外される形となってしまったのだ。
トルコ側からみれば、トルコ国内やシリア北部のクルド人が分離独立しては困るのだろう。そんな思惑をもつアメリカとトルコ。NATO(北大西洋条約機構)の一員であるにもかかわらず、勝手にパワーゲームに走り、再び中東を混乱させようとしている。これに対して、フランスのマクロン大統領は、「NATOは脳死状態に陥っている」と危機感を募らせた。