安倍晋三首相は12月23~25日に中国を訪問する。日中韓首脳会談が予定されているほか、個別に日中、日韓の首脳会談も検討されている。「戦後最悪」と言われるまでこじれた日韓関係は今後どうなるのか。ソウル在住のジャーナリスト、藤原修平氏が現地からリポートする。
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韓国は日本との関係改善を、どこかのタイミングで狙ってくる。なぜなら、韓国社会がそう望んでいるからだ──。
つい先日、日本の週刊誌『AERA』(12月9日号)と韓国紙『亜洲経済』による共同調査が行われ、日韓両国で同時にそれぞれの記事が発表された。調査は両国の街頭などでそれぞれ約100人ずつ、共通の質問をぶつけたもので、相手国の印象などを聞いている。
その中に、『AERA』の記事本文では触れられなかった項目があった。「日韓関係は重要かどうか」という質問についてだ。12月2日付『亜州経済』によると、この質問に「重要だ」と答えた韓国人は85%にのぼる。同じ質問に「重要だ」と答えた日本人は82%でほぼ同じだった。今年後半を通じて、日本製品の不買という嫌日運動を官民挙げてやって来た韓国社会にしては意外に思えなくもない。
実はこの調査、GSOMIAの延長を韓国政府が発表した11月22日よりも前の同月中旬に行われたところが注目に値する。その頃の韓国社会では日本を嫌う風潮が大勢を占め、「GSOMIA破棄」を訴える声も決して小さくなかった。そうしたなかでも、日韓関係は「重要」という共通認識が両国にはある。
さらに最近、韓国の雰囲気が変わりつつある。GSOMIA延長の発表から3週間あまりが過ぎ去ろうとしている今、不買運動は相変わらず継続中ではあるが、その勢いは徐々に和らいでいる印象だ。
日本のアニメ関連のグッズや菓子類を持ち歩いている子どもや若者をよく街で見かけるようになった。日本への旅行を計画する声も聞こえてくるし、インスタを覗けばソウル市内で日本人が経営する店の写真が出てくる。日本在住の韓国人が各地の写真をアップする頻度が増しているようにも思える。日本風の居酒屋はもともと賑わっていたが、日本のものを少しずつ購入する動きが韓国社会に現れつつある。
11月22日のGSOMIA延長決定はその契機となったわけだが、その発表をもっとも迅速かつ入念に報じたのは、文在寅政権支持とされる地上波テレビ局MBCではないだろうか。たしか夕方5時半ごろの報道だったが、GSOMIA延長を速報で報じるなか、「12月中旬には日韓首脳会談が開かれる予定がある」ことまで言及した(実際は同月下旬で調整されていて、日程は未定)。他局では触れられなかった首脳会談の日程までMBCが独占状態で報じたのは、安倍晋三首相への警戒感は滲ませつつも、両国政府間のいち早い対話を望むMBCの本音を見たような気がする。