「小2の息子を怒鳴っていたら通報された」。2019年11月3日、47才の母親の投書がある新聞に掲載された。
ちょっとしたしつけのつもりが、どうしても声が大きくなり、言葉も荒くなってしまうことがある。そんな姿を見られたある時、子ども家庭支援センターの職員が家を訪れる。
虐待の“疑惑”をかけられた親は、自分なりに必死に子育てをしていただけということも少なくない。
神奈川県の主婦・Aさんは、日々のしつけが虐待だとみなされ、児童相談所(以下、児相)に通報されてしまった1人だ。
「息子は小学校低学年まではわがままで甘えん坊で、学校に行くのを嫌がって大変でした。1人で行きたくないと泣く息子を玄関まで引きずって放り出すように見送るのを毎朝していたら、ご近所の誰かに通報されてしまった。しばらくの間、定期的に児相の人が家に来るようになりました」(Aさん)
児相に通報されたAさんは「がんばってしつけしている私が通報されるなんてと理不尽に感じる部分もあったが、話を聞いてもらえたり、アドバイスしてもらえたりと、結果的に子供も自分も助けられた」と振り返る。冒頭の新聞投稿者も「今は“見守ってくれている”という安心感がある」と記している。
埼玉県の専業主婦のBさんは、第三者に子育ての悩みを聞いてもらえた経験から、虐待を未然に防ぐことができた。
「娘が小学生の頃、成績が伸びないことに悩んで、怒鳴ってばかりいた時期があります。ある時、娘が塾の先生に“お母さんが怖い”と言ったらしく、それから毎日のように塾から電話がかかってくるようになりました」(Bさん)
おかげでBさんは先生に不安や愚痴を吐き出すことができ、徐々に怒鳴らなくなっていった。一般社団法人こころぎふ臨床心理センター代表理事の長谷川博一さんは、今は昔と違って、勉強や習い事で親が子供に情熱を注ぐのが当たり前の時代だと指摘する。
「まじめな親ほど、“ちゃんとしつけなきゃ”“ダメな親だと思われる”と、しつけに力を入れすぎてしまう傾向にある」(長谷川さん)
◆通報すべきか? そして通報されたらどう捉えるべきか
力みすぎた子育てをやめるには、親自身の“吐き出しの場”が不可欠。児相はその1つだ。東京都に住むCさんは、決まって毎朝5時から1~2時間ほど近所のマンションから聞こえてくる子供の泣き声が気になって、匿名で児相に通報した。