ひと昔前は“少量の酒を飲む方がまったく飲まないより死亡率が低い”といわれたが、最新研究ではそれが覆されているという。飲むからにはなんらかのリスクを覚悟せよということだ。しかし太古の昔から、人は酒に親しみ、利用してきた。久里浜医療センター副院長の松下幸生さんはこう語る。
「アルコールが緊張をほぐしてリラックスさせる効果は検証されています。また食欲が増したりコミュニケーションがスムーズになるのも明らか。認知症への酒の影響についてはまだ研究途上ですが、少量の飲酒が認知症リスクを低減することは多くの研究結果が示しています。
ただ酒が難しいのは、よい効用が得られる“適量”の範囲がとても狭いこと。ほどよく酔う量と致死量の幅は10倍くらいしかない。コントロールがとても難しいのです」(以下「」内同)
厚生労働省が健康増進法に基づいて策定した『健康日本21(第1次)』で、“節度ある適度な飲酒量”の指標は純アルコール1日平均20g(成人男性)以下、女性は10g以下、高齢者はさらに少量を推奨。酒に換算すると結構、少ない気もする。
「悪影響を避け、酒の醍醐味を味わい楽しむには、やはりリスクをよく理解して、適量を守ることに尽きるのです。指標の数値を目安に、一人ひとりが自分の適量をしっかり見極めて決めること。若い頃強くてよく飲んでいて自信がある高齢者や、飲んだ量を忘れがちな認知症の人には、家族など周囲の人の管理の目も大切です」
酒の悪影響を回避するには、適量とともにアルコールの吸収を緩やかにすること。飲み方のコツを聞いた。
「空腹で飲むと、アルコールの吸収が速くなります。食事、おつまみと一緒に、合間に水などノンアルコールのものを挟んだりしながら、ゆっくり飲みましょう。アルコールは油脂に溶けにくいので、チーズや乳製品、油脂分のあるものをおつまみにするのもおすすめです」
晩酌の習慣がある人は、週2日の休肝日も重要だ。
※女性セブン2020年1月1日号