役所に出す届け出には印鑑が必要な書類が多々あり、うっかり忘れて出直す羽目になったりすると、言いようのない怒りにとらわれる。100円ショップでも売っていて、どんな名前でも買えるモノが、なぜ本人認証で必要なのかと。
IT技術の進歩で印影の複製が容易になり、印鑑による本人認証のしくみはすでに形骸化しつつあるが、一方でハンコがなくなると困る人々がいる。
政府は「デジタル・ガバメント実行計画」の一環で、法人設立登記の“印鑑レス”を掲げてきたが、印章の業界団体の反対で先送りになった。昨年11月には「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」が設立されている。
こうした動きに対してネットでは激しい反発が起きた。はんこ議連事務局長の中谷真一衆院議員が設立総会の開催をツイッターで報告すると、「一握りの印章業界を守るために、1億2000万人の日本人が損をする」といった批判的な意見が殺到し、炎上状態となった。
さらに今年9月に発足した第4次安倍再改造内閣でIT政策担当大臣に就任した竹本直一衆院議員が、実ははんこ議連の会長だったことが判明し、世間に衝撃が走った。9月12日の記者会見で、記者から「IT化とハンコ文化の整合性」を問われ、竹本大臣は「印鑑とデジタル社会を対立するものととらえるのではない」と、共存は可能とする見方を示している。
ネットの一部では、もはやハンコはIT化を阻む象徴のようにとらえられ、ハンコ文化を守ろうとする人々は非難の嵐にさらされている。しかし、ここに来て、彼らにとっては救世主とも呼べるハイテクマシンが誕生した。その名も「RPA&COBOTTA オフィス向け自動化支援」。要するに“自動ハンコ押しロボット”である。
このロボットは、デンソーウェーブと日立システムズ、日立キャピタルの3社が共同で開発したとの触れ込みで、12月11日に発表された。業界展示会の「2019国際ロボット展」に出展されるという。
この自動ハンコ押しロボットは、デンソーウェーブが開発・製造する「COBOTTA」というアームロボット2台と、ブックスキャナーなどを組み合わせたシステムで、片方のアームが先端にあるカメラで書面のハンコを押す領域を探して認識し、ハンコに朱肉をつけて書面に押す。もう片方のアームはエアーで吸着してページをめくったり、書類を取り換えたり、紙が浮かないように抑えたりする。ブックスキャナーは書面を電子化する際に利用する。日立システムズがプログラムを開発し、日立キャピタルがレンタルの窓口となり、メンテナンス等を担当する。