手頃な価格帯の中華料理に加え、会社帰りのサラリーマンの“ちょい飲み”需要も掴み、業績が右肩上がりだった「日高屋」。だが、ここにきて成長にブレーキがかかっている。不振に陥った要因は、わずか10円~30円ながら客足を鈍らせる値上げにあった──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。
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10月1日より消費税が8%から10%に上がったが、2%の増税はボディーブローのように利いており、消費者の財布のヒモは、一層、堅くなった。消費増税にどう対応するかは、流通・小売業の経営者の腕の見せどころである。
東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県に集中出店し、外食産業で屈指の利益率を誇る「熱烈中華食堂日高屋」(運営:ハイディ日高)は、これまで外食の“勝ち組”と評されてきた。関東圏の駅前立地を強みに、栃木の1店、茨城の2店を含めて439店を展開している(2019年11月末時点)。
仕事帰りのサラリーマンがアルコール飲料を少しだけ飲む「ちょい飲み」需要も開拓し、2019年2月期まで16期連続で増収増益を達成した。
低収益に苦しむ外食チェーンが多い中で、売上高営業利益は11%を超え、幸楽苑ホールディングス(ラーメンチェーン「幸楽苑」)やリンガーハット(長崎ちゃんぽん「リンガーハット」ととんかつ「浜勝」)、そして王将フードサービス(「餃子の王将」)をも凌駕する。ちなみに、ライバル3社の売上高営業利益率は4~8%である。
だが、そんな快進撃を続けてきた日高屋ですら目下、苦戦中だ。
2019年3~8月期の単独決算は、売上高が前年同期比横ばいの211億円、営業利益は同11%減の22.8億円。売上高は厳密にいえば、300万円のマイナスである。1999年、店頭市場(現ジャスダック)に公開した後、新規出店効果もあって、中間期、通期とも増収増益を持続してきたが、この記録がついに途切れた。
小売り・流通業の稼ぎの拠り所である既存店売上高は2018年11月以降、今年11月まで13か月連続で前年同月の実績割れが続いている。今期(2019年3~11月)の累計の既存店売上高は2.8%減、客数は2.9%減と上向く気配が見えない。
日高屋も決して手をこまねいていたわけではない。主力商品のギョーザの価格を、増税となった10月以降も230円(税込み)に据え置いた。「実質値下げ」である。さらに期間限定ではあるが、10月31日まで1皿(6個入り)を税別210円から155円に値下げした。
それに合わせて、ギョーザの中身も8年ぶりに刷新。豚肉をこれまでより40%増量しながら脂分は減らし、皮も薄く軽いものにした。ハイディ日高の高橋均社長は、「さっぱりした味で、現在2割程度の女性客を(もっと)取り込みたい」と意気込む。