【書評】「テレビ開放区 幻の『ぎんざNOW!』伝説」/加藤義彦・著/論創社/2000円+税
【評者】坪内祐三(評論家)
一九七一年に区立中学校に入学し野球部に入った私は、翌年、新校舎建築のため同部が休部になった時、大いに不満だったけれど、今ではラッキーだったと思っている。何故なら、帰宅部となったから、同年(一九七二年)夕方五時からTBSで始まった生番組『ぎんざNOW!』を毎日見ることが出来たので。様々な点で文化レベルの高い番組だった。
デビュー直後の荒井由実や甲斐バンドやクールスを知ったのもこの番組によってだし、あのキャロルがレギュラーだった。そのくせ、「新御三家」や「花の中三トリオ」をはじめとするアイドルたちもたくさん出演した。
この本の巻末に「主な出演者」というリストが載っているのが有難いが、それを眺めて行くと一九七四年五月二十九日に「殿さまキングス」とあってアヴァンギャルドだ(何しろその前日は西城秀樹、翌日はあいざき進也、翌々日は山口百恵なのだから)。
しかし『ぎんざNOW!』と言えば何といっても「しろうとコメディアン道場」だ。この本の第一章も「有名芸人を数多く輩出―『しろうとコメディアン道場』」となっている。五週連続で勝ち抜けばプロへの道が開かれるこの「道場」の初代チャンピオンは関根勤で、小堺一機もその出身だ(私が一番面白いと思ったのは竹中直人)。