芸能

古今亭志ん輔 師匠・志ん朝譲りのメリハリ効いた「富久」

古今亭志ん輔の魅力を解説(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、「古今亭の正統」を守る古今亭志ん輔独演会「志ん輔の会」から志ん生の得意ネタだった『猫の皿』、志ん朝譲りでありながら独自アレンジを加えた『富久』についてお届けする。

 * * *
 志ん朝の得意ネタの数々をきっちりと継承し、「古今亭の正統」を守る演者として真っ先に思い浮かぶのが、古今亭志ん輔だ。「志ん朝ロス」が大きかった時期、僕は随分と志ん輔を追いかけた。表情豊かに、時には徹底的に人物像をデフォルメしてみせる志ん輔の高座は、あくまでスマートな志ん朝とは表面的な印象がだいぶ異なるが、根源的な部分で最も濃厚に「志ん朝の遺伝子」を受け継いでいるからだ。

 11月13日、国立演芸場の「志ん輔の会」に出掛けた。例年4月と11月に開かれる独演会だ。今回のネタ出しは『猫の皿』『富久』。『猫の皿』はネタ下ろしだという。

『猫の皿』というと春風亭小朝や立川志の輔、そして一時期の柳家小三治が頻繁に演じた噺という印象がある他、茶店の親父を破天荒なキャラに設定した三遊亭歌武蔵の独創的な演出が忘れられないが、元は志ん生の得意ネタである。志ん輔は、高麗の梅鉢を発見した道具屋が、猫ごとそれを手に入れるために回りくどい芝居を続ける様子を念入りに描くことで、結末で道具屋が受ける衝撃の大きさを際立たせた。

 暮れの大ネタ『富久』は初代圓左から八代目文楽へ至る系統、初代圓右から五代目志ん生に至る系統、三代目小さんから八代目可楽や五代目小さんに至る系統がある。もちろん志ん輔の『富久』は志ん朝が志ん生から継承した型で、久蔵が住むのは浅草三間町、火事の晩に駆けつける先は久保町の旦那、富の場所は椙の森神社、千両富は「鶴の千五百番」。浅草三間町から久保町へ走る寒そうな描写も志ん朝譲りだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン