お笑い芸人としてテレビ界に君臨し続ける明石家さんまは、令和になっても勢いは衰えないようだ。この年末、特番に引っ張りだこなのだ。その背景について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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12月も後半に入り、年の瀬のムードが色濃くなる中、とびきり強烈な存在感を放っているのは、明石家さんまさん。
18日に『超ホンマでっか!?TV 今年の怒り大放出!激おこ人生相談SP』(フジテレビ系)、21日に『第7回明石家紅白!』(NHK)と『さんま&手越の今夜サッカークラブ世界一決定SP』(日本テレビ系)、22日に『さんま&手越のサッカークラブ世界一決定!総集編』(日本テレビ系)、24日に『超踊る!さんま御殿!!サンタ美女が大さわぎ!超豪華有名人の聖夜祭』(日本テレビ系)と『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2019』(フジテレビ系)、25日に『1億人の大質問⁉笑ってコラえて!年末SP』(日本テレビ系)、29日に『明石家さんまの爆笑!ご長寿グランプリ2019』(TBS系)、『アメトーーーーーーーーーーク!年末5時間SP』(テレビ朝日系)と、12日間で9本もの特番に出演します。
さんまさんと言えば、現在も放送中の『明石家サンタ』に加えて、かつて『さんま&SMAP!美女と野獣のクリスマススペシャル』(日本テレビ系)が21年間に渡って放送されたように、“クリスマスの顔”というイメージがありましたが、近年はその前後の出演特番が増えて“年の瀬の顔”に変わりつつあります。
あらためて驚かされるのは、昨年の8特番から9特番に増え、しかも各局をほぼ総ナメしていること。なぜここまで年の瀬の特番がさんまさんに集中するのでしょうか? 単に「大御所芸人だから」ではない理由をあげていきます。
◆年の瀬特番はテレビ番組の忘年会
1つ目の理由は、さんまさん自身に「年の瀬のお祭りさわぎ」というイメージがあり、多くの出演者と絡めるスキルがあるから。
年の瀬の特番は、「一年を笑って締めくくろう」「たくさんの出演者を呼んで盛り上がろう」という忘年会のようなニュアンスがあり、その意味で、さんまさんはうってつけの存在。長時間特番ほど、「1つでも多くの笑いを入れよう」「1人でも多くの出演者と絡もう」というプロ意識の高さが求められるだけに、テレビマンたちが「さんまさんにまかせたい」と思うのも当然なのです。
また、現在の世帯視聴率を大きく左右する中高年層は、年の瀬というだけでテンションが上がりやすく、昭和的な忘年会のムードが好きな世代。年々、今年を振り返るまじめなニュース系特番が増えているだけに、お祭りさわぎのムードを醸し出せるさんまさんの存在感が際立つ結果につながっています。
これは裏を返せば、「さんまさん以外にお祭りムードを醸し出せるタレントが少ない」とも言えるでしょう。若年層では「忘年会スルー」という言葉が流行っているようですが、テレビに限ってはむしろ昭和的な忘年会のノリが求められているのです。
さんまさんにクリスマスや年の瀬のイメージはあっても、年始のイメージはさほどありません。年始の華やかなムードより、年の瀬のバカさわぎを優先させている様子が伝わってきますし、これはさんまさんに限らず“昭和の大物タレントのなごり”のようでもあります。
◆実は一歩引いたポジションも得意