様々なスポーツでおなじみのビデオ判定は年々、技術の更新によって大きな変革が起きている。コンピュータによる情報処理技術の向上によって試合中継がダイナミックで面白い映像になり、審判の判断材料として欠かせない存在となるだけでなく、これから起きることの予測にも影響を及ぼし競技そのものの革新にも繋がっている。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、ソニーのホークアイ、アマゾンウェブサービス(AWS)によるAI活用で起きている「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」について解説する。
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スポーツを見守る目といえば審判、というイメージが強い。だが現在は、審判という人間だけでなく「機械の目」も、スポーツに大きく関わるようになってきた。
コンピュータによる情報処理とスポーツにどのような関係があるか、改めて解説してみよう。
◆ソニーが買収した「ホークアイ」がスポーツ中継を変えた
世界中のスポーツの判定に「ホークアイ」というシステムが使われていることはご存じだろうか。先日日本で開催されたラグビー・ワールドカップでも、バレーボールのVリーグでも、そしてサッカーでも、同じ「ホークアイ」という判定システムが導入されている。
これは、スタジアムの上を通るように設置された複数のカメラで捉えた映像から、ボールや選手の位置を認識し、ラインを超えたかどうかなどの判定を補佐するシステム。俗にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)と呼ばれるもののひとつだ。
実はこの機能、みなさんもよく知る企業が提供しているビジネスだ、ということをご存じだろうか。その提供元はソニー。同社は2011年、イギリスのホークアイ・イノベーション社を買収している。ホークアイはその後もソニーの子会社として、独自のボールを追尾するノウハウや、ソニーが開発したカメラシステムなどを組み合わせることで、様々なスポーツの判定システムをスタジアムに対して販売・システム提供するビジネスを続けている。
そもそもホークアイは、テニスの自動判定を目的に開発されていた。現在、男子プロテニスのトッププロの場合、サーブの平均速度は時速200kmを超える。それを判定する能力を持っているのだから、他のスポーツも十分にカバーできる。最初の開発は2001年なので、実はもう20年近い歴史のある、十分にこなれた技術なのである。もちろん、カメラや画像認識などの最新の技術を導入して日々進化することで、より重要な技術になっている。