元プロ野球選手によるYouTubeチャンネル開設が相次いでいる。豪華ゲストがたびたび登場する高木豊、選手の人事情報を公式より先に知らせる仰天の情報力をみせる里崎智也など、野球やトレーニングから日常のライブ配信に重心が動きつつある新庄剛志など、多士済々だ。そんななか、片岡篤史チャンネルにゲストとして清原和博が3回にわたって登場した。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、元プロ野球選手によるエピソードトークがなぜネットでブームになっているのか、彼らの「雑談」はなぜ面白いのかについて考えた。
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先日、「元楽天イーグルスの一場靖弘が自己破産」といった記事を読んだ。そこで一場がYouTuberに転身したことを知る。プロ野球選手の中でもエリートにあたるドラフト1位投手だったのに……、一場の人生は波乱万丈である。そして、開設したという「一場靖弘のBASEBALLチャンネル」の動画を観て、驚いた。死にたい気分なって仕方ない現状にも関わらず、意外なほどに明るい。まるで何もなかったように自らの球史を紐解いていく。そして一場自身、我が野球人生において注力して語るべきことがピッチングにあらず、と理解している。視聴者が求めているのはドラフト制度を変えた「一場事件」だと。
動画内で一場は「当たり前の感覚で栄養費という名の金銭を受け取ってしまった」と反省していた。これまた、意外なほどすんなりと球界の闇を暴露している。
現在、YouTube業界に元プロ野球選手が続々と参加している。高木豊が先頭を切り、里崎智也が続いた。この2人のチャンネルの傾向は似ている。順位予想、技術論の解説、ゲストとのトーク、業界の裏話など、あくまでもテレビでも扱える野球ネタを主題としている。しかし、YouTubeといったメディアに視聴者が求めるものはテレビでは流せない話だったりするわけで……。
高木豊が動画を初投稿したのが2018年4月、それから2年経たずして元プロ野球選手YouTuberは多様化し、一場のような暴露も辞さないキャラクターも登場した。誰もが送り手となれる時代の変化を感じる事象である。
記事を読む限り、一場は将来的に指導者となり甲子園を目指したいとのこと。ならば、無闇にYouTubeに手を染めない方が良い気もした(難しいメディアだし)。しかし、それでも一場がYouTuberになったのは自己表現の場を探し求めた結果だろう。選手はプレーすることで称賛を浴びる。しかし、引退すればただの人、自身を表現する方法を失う。現在、多くいる元プロ野球選手YouTuberは活躍するフィールドを球場から動画に移したとも読める。