日本人の死因ナンバー1の「がん」。60代頃から、男女ともに急激にがん罹患率が上昇する。
米ハーバード大学がん予防センターによると、発がん要因のトップは「喫煙」と「食事」でそれぞれ30%を占め、「運動不足」と「職業(不規則な生活やストレスも含む)」はそれぞれ5%で、日々の生活習慣が大きな要因だ。その一方で「遺伝」は5%に過ぎない。逆に言えば、食べ物や生活習慣に気をつければ、がんリスクを低減できるということだ。
◆「赤身肉」「焼肉」から発がん性物質
ご飯やパンなどの糖質を摂らない分、肉などのたんぱく質は制限なく食べられる「炭水化物抜きダイエット」の流行とともに、国内で店舗を急激に増やしたのが、ランチでも気軽に「赤身肉」を食べられるステーキチェーン店だ。赤身肉とは、牛や豚、羊などの肉を指し、鶏肉は含まない。
近年、そんな赤身肉が、がんリスクを増加させるという複数の研究結果が報告されている。米ハーバード大学公衆衛生大学院によると、1日に赤身肉を85g以上食べる人は、ほとんど食べない人に比べてがんによる死亡リスクが10%高かった。
また、赤身肉を1日あたり50g食べる人は、21gしか食べない人に比べ、大腸がんリスクが19%上昇するという英オックスフォード大学の研究者の調査もある。
大腸がんは、日本人女性のがんの死亡数1位、罹患率2位なので、特に注意が必要だ。赤身肉はなぜダメなのか。秋津医院院長の秋津壽男さんが解説する。
「赤身肉を食べると、腸の中の悪玉菌が『ニトロソアミン』という強い発がん性物質を作り出します。これによって大腸がんのリスクが高まるのです」
調理法によってもがんリスクが高まるという。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが話す。
「米ノースカロライナ大学の研究チームが約18年かけて行った追跡調査によると、乳がんと診断される前に焼肉やバーベキューなどを多く食べていた人は、少ない人に比べてがんを含む総死亡リスクが23%高かったという結果があります。
バーベキューのように肉を直火で高熱調理すると、発がん性物質である『多環芳香族炭化水素(PAHs)』などが発生します。PAHsは肉を焼いた時の煙にも多く含まれ、それがついた肉を食べることの影響も指摘されています」