年末年始はゆっくり腰を据えて本を読む絶好の機会。2020年は果たしてどんな年になるのか? 翻訳家の鴻巣友季子が選んだ2020年を読み解く1冊は『ヘミングウェイで学ぶ英文法』だ。
●『ヘミングウェイで学ぶ英文法(1、2)』(1巻)倉林秀男 河田英介・著(2巻)倉林秀男 今村楯夫・著/アスク出版/(1巻)1900円+税(2巻)2000円+税
2019年は英語教育界の分水嶺となる年だった。萩生田文科相の「身の丈に合わせた」という言葉が有名になったが、あの失言が後押しして、不公平満載の「英語民間試験導入」が見送られたのだから、ひとまず良かった。大学入試と英語教育が利権の食い物にされずに良かったし、英語学習の思い込みにストップがかかったのも幸いだ。
日本には根深い英語幻想がある。簡単にいうと、「ぺらぺら信仰」。英語民間試験も「四技能推進」を謳ってはいるが、一番欲しいのは「話す力」なのだ。
この信仰を時代ごとに見てみよう。昭和。淀みなく英語を話せる「ぺらぺら人」は、無条件に尊敬された。平成も後期になると、流暢に話せても内容が空疎では意味がないと、「ぺらぺら」の価値を冷静に見るようになる。
そして令和。入閣したての環境大臣が国連会議に臨み、sexy発言。噴出した批判は、sexyという語の使用より、発言内容の無さに向けられていた。「ぺらぺら」は薄っぺらの「ぺら」である。彼の英語も、昭和であれば褒められたかもしれない。世間の認識が変わりつつあることに、安倍内閣当該部署の方々は気づいていないのだ。