2019年にはどんな一冊を読みましたか? 各界の著名人がセレクトする2019年の3冊を紹介します。
◆弘中惇一郎さん(弁護士)が選ぶ2019年の3冊
『とめどなく囁く』桐野夏生(幻冬舎)
海釣りに出たまま消えて失踪宣告となった男を巡る推理小説であるが、登場人物が個性的であるとともに、そのドロドロした人間関係の絡み合いが鮮やかであり、海に面した豪邸や釣り堀のあるひなびた旅館など、背景も印象的。
『孤独の発明 または言語の政治学』三浦雅士(講談社)
『空海の風景』(上下巻)司馬遼太郎(中公文庫)
◆田村智子さん(参議院議員、日本共産党副委員長)が選ぶ2019年の3冊
『にじいろガーデン』小川糸(集英社文庫)
同性愛の家族のカラフルでパワフルな日々は、切ないスパイスも効いていて、読み終えたら、夫と手をつないで歩いてみたくなるのです。この人と結婚して、家族になれて良かったと、最期の別れの時にもそう思える家族になりたいと。
『水曜日の凱歌』乃南アサ(新潮社)
『サブマリン』伊坂幸太郎(講談社)
◆宮口幸治さん(立命館大学産業社会学部教授)が選ぶ2019年の3冊
『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん(文藝春秋)
マイナスを逆転する方法。目から鱗の発想ばかりだ。ネーミングすることで誰も買わないものを価値あるものに変える。まさに言葉の錬金術。「マイブーム」「ゆるキャラ」などの新語を生み出したセンスに触れることができる。
『世界でいちばん美しい城、荘厳なる教会 世界の写真家たちによる美の記録』MdN編集部(エムディエヌコーポレーション)
『甲野善紀と甲野陽紀の不思議なほど日常生活が楽になる身体の使い方』甲野善紀、甲野 陽紀(山と溪谷社)
◆佐久間文子さん(文芸ジャーナリスト)が選ぶ2019年の3冊
『聖なるズー』濱野ちひろ(集英社)
動物性愛者(ズーフィリア)の本と聞けば怖気づく人もいるだろう。私もそうだったが、ドイツの「ズー」(というのが彼らの自称)たちへの著者の取材は誠実そのもので、セックスや、他者と生きることの意味を深く考えさせる。先入観を覆す傑作ノンフィクション。
『オーバーストーリー』リチャード・パワーズ 訳・木原善彦(新潮社)
『ひみつのしつもん』岸本佐知子(筑摩書房)
◆温水ゆかりさん(ライター)が選ぶ2019年の3冊
『女たちのテロル』ブレイディみかこ(岩波書店)
約1世紀前の女反逆児3人を、国境を越えた星座にする評伝エッセイ。アイルランド独立運動に馳せ参じた女教師(実は凄腕スナイパー)、命知らずの女性参政権活動家、半島出身の恋人と不逞社を営んだ不逞な金子文子。胸のすく記述でいっき読み。
『熱源』川越宗一(文藝春秋)
『国語教師』ユーディト・W・タシュラー 訳・浅井晶子(集英社)
イラスト/佐々木千絵
※女性セブン2020年1月2・9日号