2019年末に第50作目が公開される映画「男はつらいよ」シリーズには、毎回、主人公の車寅次郎が恋をして失恋するマドンナが登場する。歴代のマドンナのなかで、お笑い芸人の玉袋筋太郎は、マドンナといえば浅丘ルリ子さん演じるリリーしかない、と言い切る。「男はつらいよ」との出会いの思い出、なぜリリーが至高のマドンナなのかについて聞いた。
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いろんなマドンナがいたけれど、オレには浅丘ルリ子さん演じるリリーしかいねぇ(笑い)。リリーは『寅次郎忘れな草』に始まって『寅次郎相合い傘』、『寅次郎ハイビスカスの花』、『寅次郎紅の花』、特別篇と最新作を合わせると6作品に最多出場。
どのマドンナもさ、寅さんと交わりつつも自分が帰る世界があって、最後にはそれぞれの人生に落ちつくじゃない? でもリリーだけは寅さんと同じ根無し草。独り身で家庭の団欒を知らず、旅回りの歌手をしている。2人はひかれあうけど、リリーは結婚して家庭におさまる女じゃないんだよね。独りで全部背負い込んで、気が強いけど寂し気でさ。そんなところにひかれるよ。
「男はつらいよ」との出会いは、小学生の時、おばあちゃんに連れられて映画館で観た『寅次郎相合い傘』だった。子供ながらにグッときたよ。観ればわかると思うけど、雨の中、寅さんがリリーを柴又駅まで迎えに行くシーンはたまらない。あれほど美しい相合い傘はないね。
オレ、高校卒業してすぐに働いたのが、ストリップ小屋だったの。「お兄さん」って呼んでくれるキレイな姉さんもいたけど、ストリップの姉さんもリリーと境遇が似ているんだ。10日で入れ替わってしまって、二度と出会うことはない。でも15年経って芸人で飯を食えるようになった頃、新宿コマ劇場のキャバレーで、ステージで歌う姉さんに再会したの。「売れてよかったね」って喜んでくれて、一緒に飲んだあの夜はいまも忘れられない。