心疾患(心臓病)は、日本人の死因2位を占める。心臓の機能が低下して、全身に充分な血液を送り出せなくなる症状の総称を「心不全」といい、不整脈や心筋梗塞など、その原因はさまざまだ。
みなみ野循環器病院院長の幡芳樹さんは「高血圧の人は心疾患になりやすい」と話す。
「高血圧とは、心臓から血液を送り出すために強い力がかかっている状態を指します。それが続くと、筋トレで手足に筋肉がつくのと同じ原理で、心臓の筋肉が厚くなる『心肥大』が起きます。初期は動悸や息切れがする程度ですが、放っておくと、心臓のポンプの働きが弱くなる『心不全』になる。今後、患者数はさらに増えていくと考えられています」(幡さん・以下同)
実際に、心不全の患者数は全国推定で約120万人。2030年には130万人に達するといわれている。
◆糖質制限すると塩分が増えがち
近年人気の糖質制限ダイエット。ただし、やりすぎは禁物だ。
国立国際医療研究センターの2013年の発表によれば、糖質制限を5年以上続けると死亡率が1.3倍に上がるという。
「過度に糖質(炭水化物)を制限すると、たんぱく質・脂質・糖質のバランスが崩れ、体の調節機能が低下して、病気にかかりやすくなる」
健康のために、厚労省は1日に「野菜350g、果物200g、魚80g」を摂取し、食塩は「男性は8g未満、女性は7g未満」を推奨している。一方で、厚労省の研究班(滋賀医科大学の三浦克之教授ら)の研究によれば、野菜・果物・魚が推奨量の半分以下で、食塩が基準値以上だと、心疾患リスクが2.87倍にも高まると報告されている。
「糖質制限をすると、塩分量が増えがちです。主食の米やパンを減らすので、空腹を満たすために、しょうゆや塩で味つけしたおかずの量が増える。すると高血圧になり、心疾患のリスクも高まります」
群星沖縄臨床研修センター長で総合内科医の徳田安春さんは「肉の食べすぎにも注意してほしい」と話す。
「赤身肉、特に添加物たっぷりの加工肉には飽和脂肪酸が含まれている。これは血管の壁に脂肪を沈着させ、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が進んで血栓ができると、心筋梗塞につながる。たばこと同じくらい体によくないと考えるぐらいでいいでしょう。もし、どうしても糖質制限をしたいなら、野菜、豆、ナッツ類をメインに食べてください」
◆毎日のコーヒーは諸刃の剣
動脈硬化を防ぐことで有名な「ポリフェノール」。ワインやチョコレートだけでなくコーヒーにも含まれるが、たくさんコーヒーを飲めばいいというわけではない。サウスオーストラリア大学の研究で、こんな報告がある。
「1日に1~2杯以上コーヒーを飲む人」に比べて「全くコーヒーを飲まない人」と「1日6杯以上飲む人」は、どちらも心血管疾患リスクが高い傾向にあった。カフェインを過剰摂取すると、心拍数や血圧を上昇させるからだ。
幡さんは「適度なら、心疾患を予防する効果が期待できる」と話す。
「コーヒーに含まれるポリフェノールには、動脈硬化の進行を抑える作用があるとされています。カフェインには心身のリラックス効果もあるので、1日3~4杯ほどにとどめましょう」
※女性セブン2020年1月2・9日号