ドラマの評価を考える上で時代性は不可欠なポイントだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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いよいよ今年も終わりに近づきました。今クールのドラマを振り返って、目を惹いたのが書き下ろし脚本によるオリジナルの2作品です。一本は遊川和彦脚本の『同期のサクラ』(日本テレビ系)、そしてもう一本が黒岩勉脚本の『グランメゾン東京』(TBS系)。
『同期のサクラ』はすでに幕を閉じましたが、最終回(12月18日)も視聴率をぐっと伸ばして最高の数字となり、平均視聴率10.89%と二桁を保持。一方、12月29日に最終回を迎える『グランメゾン東京』も、絶えず話題になり視聴率二桁をキープする好調ぶりです。
『同期のサクラ』は、『女王の教室』『家政婦のミタ』等で世間に衝撃を与えてきた遊川氏の脚本だけに、構成のユニークさが光っていました。毎回(前半)、脳挫傷で意識が戻らないサクラ(高畑充希)が病院のベッドに横たわるシーンから始まり、1話で1年分を描き、全体で10年間を振り返る、といった凝った仕掛けでした。
途中で「サクラが脳挫傷になった理由」が、「走ってくるバイクから子どもをかばった事故」と判明。そんな突発的な事故を挿入し主人公を重病人にしてしまうご都合主義には、見ているこっちも拍子抜けしました。しかし遊川脚本ですからそれだけでは終わらない。昏睡状態から醒めたサクラは仲間に支えられて再生していく。リハビリを重ね社会復帰、とうとう花村建設へ再入社……たしかに想定外の筋立てが組み立てられていきました。
そして最終回。結局サクラは花村建設という組織に「ノー」を突きつけて退職し、小さな建設会社で再び夢を追いかける、という着地。あれ? 「私には夢があります」が口癖だったサクラ。「故郷の島に橋をかける」というでっかい夢はいったいどこへ? 遊川脚本の割にはあまりに凡庸では。ブーイングや矛盾点を指摘する声が視聴者から上がったのも事実ですが、それ以上に鳴り響いたのは、こんな賛辞でした。
「仲間っていいなとあらためて実感したドラマ」
「社会人なら誰でも抱えている葛藤を、仲間たちと乗り越えるという結末にじーんときた」「陳腐と思いながらも、真剣に生きるってこういう感じだと感動した」
ドラマの着地は「凡庸」だとわかっている。その上で、生きにくい時代に勇気をくれるドラマだった、仲間のありがたさに感動した、と評価したい。そしてエンディング曲「さくら(二〇一九)」の森山直太朗の声に素直に涙した、という人が多かったのでした。その着地の仕方が遊川脚本の狙いだったとすれば、「巧みな凡庸さ」に脱帽です。
対して、『グランメゾン東京』(TBS系)はどうだったか。