芸能

ヒゲダンはなぜ大ブレイクしたか 染み入る楽曲と硬派キャラ

Official髭男dismのメンバー(写真提供/ポニーキャニオン)

Official髭男dismのメンバー(写真提供/ポニーキャニオン)

 2019年──。2010年代の終わりでもあり、日本においては令和という新時代の始まりでもあったこの年は、様々なシーンを見ていても過渡期であり乱世の幕開けすら予感させた。そんな不安定で不安がつきまとう時代、J-POP界で頭角を現したのが、今年の第70回NHK紅白歌合戦にも初出場を果たす「Official髭男dism(通称:ヒゲダン)」だ。

 彼らは突然シンデレラストーリー的に世に躍り出たわけではなく、着実に活動を積み重ねてきたうえで現在の地位までたどり着いた実力派バンドである。

 2012年に結成し、2015年にインディーズデビュー。その翌年に本格的に音楽活動を行うことを決意し、地元である山陰地方より上京する。そんな中、2017年にTV番組『関ジャム 完全燃SHOW』内の『プロが選ぶ2017年上半期ベストソング』で音楽プロデューサー・蔦谷好位置が彼らの楽曲「始まりの朝」をピックアップ。放送を受けて、バンド側も瞬時に音源をYouTubeへとアップした。

 その後も蔦谷は同番組内の『売れっ子音楽Pが選ぶ2017年ベストソング10』で彼らの楽曲「Tell Me Baby」を選出する。J-POPとしての親しみやすさに、ブルーノ・マーズを彷彿とさせるファンクセンスやスタイリッシュさが加わったポップソングは、たちまち早耳のリスナーの心を掴んでいった。

 そのスタイリッシュ性の根源にあるのが、コードワークとリズム。メインソングライターでありボーカルとキーボードを担当している藤原聡は、ヒゲダン結成前にドラマーとして活動しており、今もライブでダイナミックなドラムプレイを披露することもあるほどの手腕の持ち主である。

 そして鍵盤は楽器の性質上、ギターよりもコードに自由が利くため、コードの表現も多彩。「Tell Me Baby」はまさにそれをわかりやすく落とし込んだ楽曲で、フレーズのリフレインが続くのにのっぺりとした印象を与えないのは、細かくもなめらかに展開するロマンチックなコードワークに、そこに付随するメロディと、それを引き立てる譜割り(※音符に対しての歌詞の付け方)を兼ね揃えているからだ。

 2010年代の日本の音楽界は、どれだけフックを残すか、大きなファーストインパクトを与えられるかで、聴き手の意識を掴もうとするものも多く見られた。だからこそ聴き手にはヒゲダンのミッドテンポで心地好い、洒落たビート感は新鮮に響き、愛嬌のあるメロディとそれをナチュラルに歌いこなす藤原の歌唱力は安心感を与えた。聴いていると自然と目の前が鮮やかにロマンチックに色づくような感覚も、彼らの音楽を何度もリピートしたくなる理由だろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン