オンラインゲームのチャット機能が、子どもたちを危険にさらしていると話題にあがることが増えている。たとえば、未成年者誘拐の容疑者が子どもと接触したきっかけだと言われたり、中学生が大麻購入をもちかけられたなどといったときに、ツールとして使われているのがゲーム内でユーザー同士がメッセージのやりとりができるチャット機能だ。そうした無法行為を見慣れている空間だからなのか、ゲームのチャットでは、他のSNSでは見られないほどの迷惑行為に遭遇する。
中高生のころから色々なオンラインゲームで遊んできた大学生の勇人さんは、 本当に迷惑なプレイヤーっているんですよと苦笑する。
「チームを組んでプレイするゲームなのですが、ちょっと失敗でもしようものなら、そのメンバーに暴言を吐き続ける人がいます。一人ではできないゲームですし、チームを組んでくれることを感謝するのが基本のはずなのに、聞くに堪えない罵詈雑言を並べ立てるんですよ。ちょっと下手だったとしても、誰だって初心者だったときはあるし、最初から上手な人なんていない。それを、お前のせいで負けたんだとしつこく罵る。そういうプレイヤーは何人もいて、悪質プレイヤーとして情報共有もされるんだけれど、対策が追いつかない。彼らは匿名だし何をしても大丈夫だとでも思って暴れてるんじゃないですか」
匿名だと気が大きくなって、リアルでは絶対に言わないようなことを書き込む、という行動はネットにはつきものだ。2000年代前半は主に匿名掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)でそれは行われ、警察沙汰もなんどか起きた。その後、スマホとSNSの普及で不穏当な発言の場所はTwitterなどのSNSへ。さらに最近では、ゲーム内チャットへと場を移している。
これまでは、チャットで騒ぎを起こしても逃げ放題だと過信できたかもしれないが、今後は逃げ得とはいかない雲行きだ。というのも12月初旬、オンラインゲーム『人狼ジャッジメント』のチャットへ大量の投稿をし、アカウントが凍結された後も、虚偽の情報からアカウントを再作成した高校生を、偽計業務妨害罪と私電磁的記録不正作出・同供用罪の疑いで宮城県警が書類送検したのだ。インターネット上での権利侵害やサイバー犯罪に詳しい中島博之弁護士は、アプリゲームでのアカウント作成に関して、私電磁的記録不正作出・同供用罪が適用されたのは画期的だと話す。
「『人狼ジャッジメント』を運営するそらいろ株式会社はもともと、ゲームを安心して楽しんでもらえるように、度を過ぎた悪質行為へは本人を特定したうえで民事での対応をとってきましたが、刑事では初の摘発となりました。刑法の私電磁的記録不正作出・同供用罪はこれまで、ネットオークションやフリマアプリでのアカウント不正作出やオンラインゲームのアイテムデータの改造等に対しては適用されてきました。アプリゲームでアカウントを凍結されたにもかかわらず、虚偽の情報から新しくアカウントを登録しなおすことそのものが違法であると判断されたのは、おそらく初の事例になります」