個性的な女優やアーティストのものまねを嫌みなく披露する清水ミチコにとって、桃井かおりはものまねの対象というだけでなくファンでもある女優だ。それぞれの時代の旬の女優が“マドンナ”として出演することで知られてきた「男はつらいよ」シリーズに、桃井かおりは第23作『男はつらいよ 翔んでる寅次郎』(1979年、監督/山田洋次)に田園調布のお嬢様・ひとみ役で出演している。ものまねレパートリーとしても知られる大好きな桃井かおりがマドンナ役で発揮した魅力について、清水本人が語った。
* * *
「男はつらいよ」シリーズはほとんどの作品を観ています。女性から見た寅さんの魅力は、やっぱり心が清くて純粋なところ。あの人間性にひかれますね。
マドンナは皆さん素敵ですが、なかでもよかったのは、『翔んでる寅次郎』で桃井かおりさんが演じた入江ひとみ。田園調布育ちのお嬢様ですが、マリッジブルーになって結婚式場からウエディングドレス姿で逃げ出すという役柄です。桃井さんの「枠に収まらない女優」のイメージにピッタリですし、持ち前の品の良さも感じて、ますますファンになりました。
この映画には、短大時代に知り合った山田洋次監督の娘さんが出演していたんです。一緒に映画館で観たのですが、もう羨ましくって。「桃井さん、どうだった?」と何度も聞いてしまいました(笑い)。高校生の頃から桃井さんの口調を真似るほど大好きですから。山田洋次監督は『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)でも、桃井さんから田舎の女の子が持つ素朴な魅力を引き出していらっしゃいます。
私がやるモノマネはワンパターンですが、桃井さんっていくつもの表情を持つ魅力的な女優さんですよね。
【翔んでる寅次郎・あらすじ】北海道を旅する寅次郎は、マリッジブルーで家出した入江ひとみのピンチを助け、悩み相談にのる。ひとみは後日、披露宴からドレス姿のまま逃げ出して、とらやへやってくる。何不自由なく育ったお嬢様が本当の幸せを見つけるまでを寅次郎が見守る。
●しみず・みちこ/1960年生まれ、岐阜県出身。モノマネなどのお笑いにとどまらず、ラジオ、エッセイなど幅広い分野で活躍。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号