2020年のコンパクトカー市場は、トヨタ自動車「ヤリス(旧ヴィッツ)」vsホンダ「フィット」の対決ばかりが注目されているが、他社も指をくわえているわけではない。脱・大衆車メーカーを標榜するマツダからは、エントリーカーの「デミオ」改め「MAZDA2」の新型が登場するのではないかと目されている。果たして、どんなクルマになるのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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トヨタの「ヤリス」とホンダの「フィット」が、奇しくも同じ2月に発売開始とあって、2020年はコンパクトカーの話題で盛り上がりそうな雰囲気だ。
ヴィッツは1999年、フィットは2001年にそれぞれ初代が登場したわけだが、このBセグメントと呼ばれるコンパクトカーのジャンルで、両車よりもデビューが早かったのが、マツダの「デミオ」(現「MAZDA2」)である。1996年のことだった。
1996年と言えば、マツダが苦境に陥っていた時期で、同年にフォードが出資比率を33.4%まで引き上げている。窮状を脱するために投入されたデミオは、既存車の「レビュー」のプラットフォームを流用した、いわば急造品だった。が、コンパクトクラスとして初めてワゴンタイプを採用し、車検上の区分もステーションワゴンだったという。
初代デミオはシートアレンジの多彩さなどがウケて、マツダにとって起死回生作となった。通常のクルマは発売後、しばらく販売台数が伸び、数年経過する中でなだらかに販売が落ちていくのが常だが、デミオは当初は地味な出足だったものの、逆に2年目、3年目と時間が経つごとに販売台数を伸ばしていった。
2代目が登場したのは2002年。すでにヴィッツ、フィットが登場し、特に2002年はフィットが驚異的な販売台数を記録して、年間販売ランクでトップを奪取するほど市場を席捲している。また、2004年にはスズキから出た「スイフト」も競合車に加わるなど、コンパクトカー激戦の時期でもあった。
その中でデミオは、初代のトールワゴンのスタイルは維持しつつ、フォードの「フィエスタ」とプラットフォームを共有し、走りの良さも売りになった。同時にカジュアル、コージー、スポルトと3タイプを用意し、利用シーンやニーズに合わせた選択ができたことも好感されている。ネガな点は、初代に比べて車重がだいぶ上がってしまったことだ。
ちなみに、2004年にはデミオベースの小さな高級車という触れ込みで、「ベリーサ」(1500ccのみ)も登場。レザーシートや初となるHDDオーディオを採用、インパネの質感も上げ、価格もベーシックモデルで153万円、上級グレードは200万円という値付けで、商業的にはイマイチだったが、好きな人には刺さったモデルだった。