大会創設100周年となった2020年の第96回箱根駅伝。大会新記録となる10時間45分23秒で、2年ぶり5回目の総合優勝を果たしたのは、青山学院大学だった。令和初の箱根駅連を制した、名将・原晋監督(52才)はどんな気持ちで大会に挑んでいたのだろうか――。
2019年の年の瀬、青山学院大学の原晋監督を訪ねた。原監督が2019年4月から教授を務める青学・相模原キャンパスには学生と教員600人が応援メッセージを寄せ書きした巨大な青学ユニフォームが掲げられ、監督が背負う責任の大きさが伝わってきた。
第95回大会で悲願の初優勝を果たして連覇を狙う東海大学が「令和の常勝軍団」をテーマに掲げて眼前に立ちはだかる中、王者から挑戦者へ転じた青学はどう挑んだのか。
「“絶対に優勝しなければいけない”というような脅迫観念にかられた管理監督はしたくなかった。箱根駅伝で優勝するということは、1年間頑張ってきたことの“ご褒美”だと考えているので、1位だろうが最下位だろうが、笑顔で堂々とゴールしなさいと選手たちに話してきました。
順位ではなく、“あの時もっとストイックな生活をしていれば”“もっとトレーニングしていれば”と思うことのない、悔いのない走りをして襷をつなぐことが大事なんだと。優勝を逃して謝りながらゴールする選手もいますが、ぼくは好きじゃないんです。1年間あなたたちを見てきた私からすれば、どんな順位でも誰かに後ろ指を指されることはないんだよ、ってね。悔いのない生活、練習をするために厳しく指導し、実力不足であればズバッと指摘もします」(原監督・以下同)
今回、エントリーメンバーには主将の鈴木累人選手(22才)など4人の4年生が入ったが、4年時の夏までは調子が上がらず「今年の4年生はダメだ」と叱咤激励してきた。
「大学スポーツは4年生が軸。そして、“藤川拓也世代”“神野大地世代”と、“○○世代”というのがずっとついてまわるんです。だからこそ4年生には常に現状を認識させ、『ここで奮起しなければ、おまえたちの代は大きな汚点を残すよ』と課題を与えてきました。
12月になって30km単独走を力強く走る彼らを見て、箱根で快走する姿が浮かんだんです。その瞬間“やっぱり4年生は強かった!”と感じて、名付けたのが『やっぱり大作戦』。2015年の『ワクワク大作戦』と、今回の『やっぱり大作戦』は自然と降ってきたんです。正直なところ、2回目以降は周囲に期待されて“またか”なんて思ってもいましたが(笑い)、今回は“これだ!”とひらめきました」
◆1年365日、常に駅伝のことを考えている
中国電力のサラリーマンから青学の駅伝監督へ転身して16年。今では常にチームのことを考え、「1年365日、明日箱根駅伝だったら1区から10区まではこのメンバーだな」とシミュレーションしていると語るが、自身にとって駅伝とは──。