スポーツ

青学の名走者が語る箱根の往路、1位でも「なんとか襷だけは」

青学の歴代名走者が箱根駅伝を回想(時事通信フォト)

 青山学院大学が、2年ぶり5回目の総合優勝を果たした2020年の箱根駅伝。「花の2区」で11年ぶりの驚異の区間新記録が出ると、往路は上位4チームが新記録をマークするなど、スリリングな展開となった。そこで、青学の歴代の名走者が箱根の「復路」を振り返る──。

 1月3日朝、冷え込みの厳しい箱根の山中から復路が始まる。芦ノ湖をスタートする6区は最初の4kmを上ると、5区とは逆に標高差840mを一気に下っていく。険しい山を下り切ると首都目指して海沿いを東に進む。

 2017年大会では7区を走った青学大の田村和希(住友電工、24才)。1位で襷を受け取ったが、残り10kmで脱水症状を起こして失速した。

「この年は直前に体調を崩し、スタートラインに立つ前は本当に心配でした。不安が的中して後半に失速し始めてからは『なんとか襷をつながないと』という気持ちでいっぱいでした。襷をつながないと記録として残らず、チームとしても来年は予選会からの出場になるので、とにかく必死でした」(田村)

 粘りの走りで1位のまま襷をつなぎ、そのまま逃げ切った青学大は3年連続3回目の総合優勝を果たした。

 高層ビルの合間を縫うように走り、日本橋を抜け、読売新聞社前を右折すれば、栄光のゴールが待っている。

 2016年、青学大のアンカーを務めた渡邉利典(GMOインターネットグループ、26才)は、1位で襷を受け取るイメージトレーニングを重ねてきた。区間新を狙ったのにラスト3kmで脱水症状となったのは誤算だったが、無事に仲間の待つ大手町までトップのまま帰ってきた。

 総合優勝のテープを切った瞬間の思いを、渡邉は『箱根のメンタル』(宝島社)でこう明かした。

《ありがたかったですね。感謝というか。一緒に4年間やってきたことが、ようやくここでピッタリ終わることができたという。最後のランナーが僕でいいのかなと思ってしまった部分もあるんですけれど、みんながそれ以上に笑顔で待っていてくれたので。胴上げもしてもらって。本当によかったなと》

 やはり仲間と味わう優勝は特別なものであるようだ。

 渡邉の2年後輩である田村は、箱根に4年連続出場して4年連続総合優勝という偉業を成し遂げた。

「4年生の時の優勝がいちばんうれしかったですね。その年は出雲駅伝と全日本駅伝で勝てなかったけど、先輩から受け継いだ箱根の4連覇を狙う立場として、優勝できたのはすごくうれしかった。箱根を走れなかった同期の部員が出場したメンバーと喜び合う姿を見て、『4年間みんなでやってこられてよかった』と感じました」(田村)

 優勝経験のある選手はみな、同じ思いだろう。
(文中、敬称略)

※女性セブン2020年1月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅マンションの火災で家族を失った猪口邦子議員(時事通信フォト)
猪口邦子議員、自宅マンション火災で夫と長女が死亡 「政界はジャングルですが、家庭は温かい草原なんです…」幸せな日常を一瞬にして奪った猛火
女性セブン
“アメリカのお騒がせセレブ”として有名なタレントで実業家のキム・カーダシアン(本人のインスタグラムより)
《頭隠して尻隠さずなハイレグ姿》カニエ・ウェストの元妻(44)と現妻(29)が“ほぼ丸出しファッション”対決か
NEWSポストセブン
窮地に立たされている藤原紀香と夫の片岡愛之助
【SNSに「試練は人を強くする」と投稿】藤原紀香、夫・片岡愛之助が稽古中に重傷 窮地を支える“9年目の梨園の妻”の心強さ
女性セブン
阪神残留を決めた大山
《巨人行ったらお前の実家が無くなると思えよ》阪神・大山悠輔のFAめぐり脅迫まがいの投稿も…そば店を営む実父が明かした「ファンとのやりとり」
11月に不倫が報じられ、役職停止となった国民民主党の玉木雄一郎代表、相手のタレントは小泉みゆき(左・時事通信フォト、右・ブログより)
《国民・玉木代表が役職停止処分》お相手の元グラドル・小泉みゆき「連絡は取れているんですが…」観光大使つとめる高松市が答えた“意外な現状”
NEWSポストセブン
アメリカの実業家主催のパーティーに参加された三笠宮瑶子さま。写っている写真が物議を醸している(時事通信フォト)
【米実業家が「インスタ投稿」を削除】三笠宮瑶子さまに海外メーカーのサングラス“アンバサダー就任”騒動 宮内庁は「御就任されているとは承知していない」
NEWSポストセブン
10月末に行なわれたデモ。参加者は新撰組の衣装に扮し、横断幕を掲げた。巨大なデコトラックも動員
《男性向けサービスの特殊浴場店が暴力団にNO!》「無法地帯」茨城の歓楽街で「新撰組コスプレ暴排デモ」が行なわれた真相
NEWSポストセブン
公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン