臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、報復攻撃も開始され、一気に状況が緊迫するアメリカ・イラン情勢について考察。
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日本時間の8日朝、ついにイランの報復攻撃が始まったアメリカとイランの対立。その要因を紐解いてみたい。
イランの革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が、イラクで米軍の空爆によって殺害されたことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は3日、記者会見で「われわれは昨夜、戦争を止めるために行動を起こした」と神妙な面持ちで述べた。
これまで何度もばかげた戦争はしないと述べていただけに、「戦争を始めるために行動を起こしたのではない」と改めて自身の行動を正当化。殺害した理由を、昨年末31日にイラクのアメリカ大使館が攻撃を受けたことと、自国の外交官や軍人への攻撃を計画していたためと説明。
ツイッターでも、ソレイマニ司令官をテロリストとして「何年も前に排除されるべきだった」と述べ殺害を正当化。米政府は実際、昨年4月、革命防衛隊を外国テロ組織に指定していた。
米大使館襲撃以前にもイランは、昨年6月に米軍の無人機を撃ち落とし、9月にはサウジアラビアの石油施設を攻撃、12月にはイラク北部を攻撃し米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷していた。米国内では度重なるイランからの攻撃に対し、何ら行動を起こさない大統領を「弱腰」と非難する声が大きくなっていたこともある。
トランプ大統領にとっては、自身の決断を正当化する理由が次々に出てきたことで「殺害の合理化」が行いやすくなったのだ。「合理化」とは自我を守るための防衛機制の1つで、自分の行動や考えを都合のよい言い訳や言い逃れ、理屈で正当化することをいう。
これまで、米国とイランの間で緊張が次第に高まる中でも動かなかったトランプ大統領だが、大使館襲撃によりイランへの攻撃を自身の内で合理化する条件がついに揃ったのだろう。イランの英雄と呼ばれる司令官の殺害という、世界中に強い衝撃を与える形で報復を行った。
ツイッターによる過激なメッセージの配信、メキシコ国境の壁の建設、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との直接会談などを見ても、最も効果的でインパクトが強く、誰も考えないようなやり方で、世界に自身の力を見せつける方法を選択するのがトランプ流だ。