正月の初売りセールで洋服をまとめ買いした人も多いだろうが、「近年、アパレルショップの接客対応が悪すぎる」と指摘するのは、ファッションジャーナリストの南充浩氏だ。南氏が実際に遭遇した“トンデモ販売員”の呆れた実態を報告する。
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洋服を買いに行くのが嫌だという人は少なくありません。何が嫌なのか理由は様々でしょうが、最大の理由のひとつに、販売員が苦手というものがあります。確かに気持ちの良い販売員もいますが、中にはとんでもない対応をする販売員も多く見受けられます。そこで、個人的に出会った「トンデモ販売員」の例をいくつか挙げてみたいと思います。
昨年、某カジュアルチェーン店の「ブラックフライデーセール」を覗いたときのことです。ブランド品が半額以下に値下がりしていて、思わず見入ってしまいました。
その中から2990円に値下がりしたスキニージーンズをちょっと試着してみたのですが、思った以上にピチピチで、まるでレギンスかタイツを穿いたようになりました。私は顔も大きいし肩幅も広いため、あまりにも下半身がピチピチだと、どうにもバランスが悪く見えます。サイズ的には問題ないのですが、そもそもこれが似合っているのかさえ分からず、試着室で悩んでいました。
すると男性販売員が「いかがですか?」と声をかけてきたので、カーテンを開けて「サイズは問題ないのですが、果たしてこのピチピチが似合っているのかどうか分からずに悩んでいたんです」と答えました。
私はこれまでの買い物の経験上から、次に販売員がこんなアドバイスをしてくれるのではないかと期待していました。
「見慣れていないだけで、じつは他人から見たらそれほどおかしくはないですよ」
「もう少し太いシルエットの商品でもいいかもしれませんね」
しかし、この販売員は「はい……」と言ったっきり口をつぐんでしまいました。しかもその場でじっと佇んでいます。これにはこちらも対応に困ってしまいます。普通の販売員なら、ここで「じゃあ、他の商品をお探しください」とか「何かありましたら、またお呼びください」とか、そういう返答をしてその場を立ち去ると思うのですが、「はい……」と言ったっきりその場を動こうとしない販売員に出会ったのは初めてです。
さすがにこの対応にはイラっとして、「もういいです!」と答えて、そのスキニーを脱いで売り場に自分で戻しました。あの販売員はどういう考えだったのでしょう。いまだに謎です。