15歳だった2018年8月から環境活動家として活動しているグレタ・トゥーンベリさんは厳格なベジタリアン、ヴィーガンだという。様々な主義主張や思想、信教のために食餌制限するのは自由だが、やりすぎは問題があると諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は指摘する。37歳で亡くなった宮沢賢治の食生活に注目して、鎌田医師が解説する。
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宮沢賢治の作品に『ビヂテリアン大祭』という小説がある。「ビヂテリアン」とは、ベジタリアンのこと。そのベジタリアンの大祭に、各国から代表が参加する。菜食主義はいいのか悪いのか。擁護派と否定派がカンカンガクガク論を戦わすのである。
論点は栄養学的なものだけではない。みんなが菜食主義になったら人類の半分は餓死する。動物がかわいそうという理由で肉を食べないというが、人類も動物なのだから、菜食で餓死するのを見過ごしていいのか、とか。動物がかわいそうというのは、動物心理学的に誤りがある、とか。そもそも動物と植物の境界はあいまいである、とか。さらには生命観や宗教を巻き込んで、議論は白熱していくのだ。
おもしろいのは、主人公が自分たちベジタリアンを「菜食主義者」というより、「菜食信者」と訳したほうがいいなどと冷静に述べていること。菜食主義には、動物の肉を食うのは動物がかわいそうという「同情派」と、肉食は健康のために食べないほうがいいという「予防派」があるとしている。
さらに、実践方法も3つ。肉やミルクなど動物質のものはすべてダメという厳格派、ミルクやバター、卵などは直接命を奪うわけではないのでかまわないという穏健派、最小限の肉食はいいが、そのかわり自分が動物に食われても仕方ないと認める派もある。笑ってしまった。
この作品は、宮沢賢治が亡くなった翌年に発表された。原稿が一部散逸しているが、なんだか不思議な熱気に満ちている。