昨年末、「0才児の頃の記憶を持っている」という兄妹のエピソードが、全国の母親の間で大きな話題に。当人に話を聞いたところ、思いがけない子供の“本音”が判明した!
深夜、外出先、食事中、突然泣き出し、なかなか泣きやまない赤ちゃんに苦労した思い出が子育て経験者なら誰にでもあるだろう。
漫画家の箱ミネコさんも、息子が乳幼児だった頃の子育ては、わからないことの連続だった。ある日のこと、1才8か月年上の兄に息子の夜泣きについて相談してみた。すると兄は、「おれが覚えている限りでは…」と、自身が0才児の時に「嫌だったこと」や「やってほしかったこと」を次々と語り出し、妹の箱さんにアドバイスを始めた。
半信半疑ながら、箱さんが兄の言う通りに実践すると、本当に息子が泣きやんだのだ。そんな不思議な体験談を箱さんがSNSで発信すると、「ぜひ、育児本にまとめてほしい!」と大反響を呼んだ。
「こんなに反響をいただけるとは思わず、驚いています。兄は子供の頃から本当に記憶力がよく、一方で、デリケートすぎる一面もあり、親にとっては“育てにくい子供”だったそうです。私は兄のような記憶力はありませんが、親には“あなたは育てやすかった”といつも感謝されました(笑い)」(箱さん)
箱さんの兄の宮崎淳さん(54才)は、大学の講師も務める映像作家だ。幼い頃からその能力はずば抜けていたようで、幼少期の記憶は「映像」として記憶に残っているという。
宮崎さんの最も古い記憶は、生後6か月頃の真冬に、人々が集まる中、もくもくと白い湯気が立ち上る映像だ。母親に抱っこされているため、その視点は高く見下ろすような形だという。
「あれは何をしていたのだろうと、長年、不思議でした。誰に尋ねても“覚えていない”と言われ、判明したのはぼくが大学生の頃。友人のアパートの蛇口が寒さで凍ったので、お湯をかけてとかしたんです。その湯気を見て合点がいきました。親にもう一度確認してみると、“ああ、そういえばアパートの共同水道の蛇口が凍ったことがあった”と懐かしそうに思い出していました」(宮崎さん)
一般的に、人間が記憶として思い出せるのは3才以降だといわれる。覚えていたとしても、後々になって人から聞いた話を自分の記憶として勘違いしていることが多い。宮崎さんのように自らの力で記憶を解き明かすというのはかなりのレアケースだ。
なごみクリニック院長で小児科専門医の武井智昭さんが解説する。
「子供の記憶には、脳や中枢神経の発達、言語の学習能力などが影響しています。3~4才になり、“うれしい”“悲しい”などの感情を言葉で表現できるようになると、記憶にも残りやすくなる。それ以前の記憶が残っているとしたら、よほど負荷がかかるほどインパクトが強かったということでしょう」
さっそく、言葉が話せない乳幼児にまつわる疑問を淳さんにぶつけてみた。まずは、「夜泣き」の理由だ。