コンプライアンスが叫ばれる昨今、教育の現場でも線引きの難しい事象は多々ある。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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やっぱり中国でも日本と同じような問題あるのだな、そんなことを感じさせる問題がネット上で盛り上がった。注目を集めたのは数枚の写真だった。そこでは、明らかに高校の正門だと分かる門扉の前に生徒たちが集まり、一点を見つめて輪になっていた。
集まった生徒たちの視線は一様に厳しい。その理由は、目の前で男性教師が厳しい指導を行っていたからだった。1枚目の写真には、登校してきた一人の女子生徒の化粧を無理やり落とす男性教師の姿が映っている。逞しい体に小さめの青いTシャツ、サングラスに角刈りというスタイルだ。その男性教師に有無を言わさず顔を拭われた女生徒は白いシャツにジーパンを履いた姿。2枚目の写真では、長髪のその女性が少し悲しそうに去ってゆく姿が映っているのだが、手前では男性教師が使った黒いタオルを足元のバケツで洗っている様子がうかがえる。
2枚の写真からは、その白シャツの女性だけではなく、女生徒が次々に同じような仕打ちを受けたことが容易に想像された。これらの写真がSNSにアップされると、ネットの中ではたちまち大きな論争が起きたという。
賛成派の意見は、概ねこんな感じだ。
〈男性教師の行動は妥当だ。こうした厳しい態度は学生への思いやりでもある。学校で学生がきちんとしているのは当然だ。学生時代は勉強をすべきで、それは一生で一番美しい時間だ。社会に出れば化粧する機会などあふれるほどある〉
一方の反対派の主張は、こうだ。
〈学校にはもちろん身なりを整えるという規則があり検査もある。けれども、だからといって事前の通知もなく突然、顔をタオルで拭われるのは、あまりに生徒の心を踏みにじる行為だ。まずは言って聞かせるのが道理である。〉
どちらの意見に共感できるかはさておき、日本でも中国でも、教育の難しさは同様らしい。