年末年始の日本は、この“世界的逃亡者”に翻弄された。12月29日に制限住居を“脱出”し、関空から出国した日産元会長のカルロス・ゴーン氏は、レバノンの首都ベイルートに渡り、世界に向けた会見(日本時間1月8日)を開いた。
世界12か国から約60媒体のメディアが参加したこの会見で、日本国内から疑問の声が上がったのは、内容以前にまず、日本メディアの参加が限定されたことだった。朝日新聞、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』(WBS)、そして本誌・週刊ポストの3媒体のみだった。
実は本誌は、かねてゴーン氏に取材依頼をし、交渉を重ねてきた。そして彼が日本を出国する9日前の12月20日、ゴーン氏に直接、取材交渉を行なうことになった。場所は保釈生活を送る東京港区の住居。出国後に東京地検特捜部が家宅捜索し、テレビにも映った洋館風の瀟洒な一軒家である。
秘書に促され中に入ると、外から見た印象とは違い、何の飾り気もない寒々しいエントランスは広いけれどほとんど物がなく、スリッパすら見当たらない。思わず靴をここで脱ぐか確認してしまった。
そのまま2階に案内され、薄暗いリビングにゴーン氏の姿が見える。濃紺のジャケットにノーネクタイのワイシャツ姿、トレードマークの太い眉を上下させながら話す様子は、日産会長時代の印象のままだった。