2018年7月に上海で、「習近平国家主席の独裁に反対する」などと叫び、習主席のポスターにめがけて墨汁をぶちまけるパフォーマンスをした女性が1年4か月ぶりに、強制的に入院させられていた精神科病院から退院した。しかし、およそ生気がなく、「お父さん」としかしゃべらず、スマホをぼんやりと眺めているだけで、痴呆症のような状態になっていることが明らかになった。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
この女性は中国中部・湖南省出身の董瑶瓊さん。董さんは習氏のポスターに墨汁をかけるパフォーマンスを短文投稿SNS「微博(ウェイボー)」上でライブ中継し自宅に戻ったあと、同日午後2時ごろ「マンションのドアの前に警官が数人いる」というメッセージを残した後、消息が分からなくなっていた。
その後、董さんの父・董建彪さんのもとに警察から「董瑶瓊は精神的に問題があると判断されて、株洲市第三医院精神科に入院している」との連絡があった。習氏のポスターに墨汁をかけることが習氏を侮辱する罪になるとして、父も共犯との容疑で半年間警察から身柄を拘束され取り調べを受けていたという。
この間、建彪さんは妻からの申し出で離婚を余儀なくされている。
今年1月2日、RFAの取材に応じた建彪さんは、「娘は昨年9月、退院し、自宅に戻ったが、ほとんど言葉を口にしない状態で、1日中、スマートフォンを眺めているだけだ」と語った。そのうえで、「娘は入院前の活発さはなく、まるで別人になったようだ。もしかしたら、病院で薬物を投与されて、精神に変調をきたしたのではないか」と話している。
RFAによると、瑶瓊さんは昨年5月、米国の中国の民主化支援団体「人道中国」(本部・ニューヨーク)によって、中国の人権問題に寄与した人物に与えられる「第2回余志堅記念賞」を受賞している。RFAは「董さん親子は中国を離れたいとの意向を示しており、海外移住を手伝ってくれる人を探している」と伝えている。