「3歳の時に子役としてこの世界に入って以来、ずっと家族のために仕事をしてきました。でも60代を迎えて、これからが自分のために生きられる時間の始まりではないかと思っています」
そう語る麻丘めぐみは16歳の時に『芽ばえ』(1972年)で歌手デビュー。可憐な歌声と抜群のプロポーションでたちまちトップアイドルとなった。1973年には『わたしの彼は左きき』の大ヒットで全国にブームを巻き起こす。
「あの頃は左ききをネガティブに見る空気がありましたから、最初は『歌ってもいいのかしら』と不安でした。でもメロディがついたら繰り返しのフレーズが印象的でとても歌いやすかった。それほどよくできた曲だったんですね」
当時は歌謡曲の黄金時代。ベストテンの常連となった麻丘にはテレビ出演に加えて、雑誌の取材、レコーディング、コンサートなど、休む間もない過密スケジュールが待っていた。
「いつも時間に追われていて、自分がどこに行くのかも分からずに移動していました。特にきつかった仕事はお正月のかくし芸大会ですね。稽古する時間がほとんどとれないまま、鼓やお琴の演奏をしなくてはならなくて、しかも本番では先輩たちとの共演でしたから、自分が失敗すると皆さんにご迷惑がかかる。もちろん吹き替えなんてできませんから胃が痛くなりました」
そんな時、心の支えになった男性はいなかったのだろうか。