戸田恵梨香主演で話題を集めているNHK連続テレビ小説『スカーレット』。この朝ドラでは、女性陶芸家・喜美子(戸田)の父親・常治を演じた北村一輝が抜群の存在感を発揮した。昨年末の放送で常治が亡くなると、ネット上では“常治ロス”になる視聴者が続出したほど。朝ドラにおける“親父役”の役割についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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そんなわけで、すっかり静かになった感じがする朝ドラ『スカーレット』。静かになった理由は明白。ヒロイン喜美子のおもしろ親父・常治がいなくなったからだ。
思えば、このドラマを強力に押し進めてきたのは常治だったともいえる。事業を失敗して貧乏なのに、見栄っ張りな常治は、酒が入るとさらに気が大きくなる困り者。大阪に働きに出た喜美子の仕送りだけでは足りなくて、大事な貯金まであてにする始末。それでも家族に対する愛情はものすごく、喜美子との結婚を考える八郎(松下洸平)が挨拶に来ると「虫、虫!!」と床をたたきまわり、彼を追い立てたりする。ほとんどギャグのような動きを見せるのである。
ヒロインと相手役が注目されがちだが、実は「いい親父が出る朝ドラはヒットする」のである。頑固、意固地、変人、照れ屋に口下手。こういう親父が出てくるとドラマは俄然面白くなる。過去には最高視聴率55.3%を記録した1985年『澪つくし』(主演・沢口靖子)の津川雅彦、1986年『はね駒』(主演・斉藤由貴)の小林稔侍、1992年『おんなは度胸』(主演・泉ピン子、桜井幸子)の藤岡琢也、2012年『梅ちゃん先生』(主演・堀北真希)の高橋克実などがいい親父っぷりを見せていた。
個人的には1976年の『雲のじゅうたん』で、飛行士になりたいと言いだした娘真琴(浅茅陽子)に「バカもーん!!」と怒り心頭だったリアル波平さんのような明治男の父(中条静夫)が忘れがたい。この波平タイプは、2016年の『あさが来た』で活発過ぎる娘あさ(波瑠)に「こら、あさ!!」と怒っていた父(升毅)に受け継がれている。分厚い壁かでかい岩のような親父に立ち向かってヒロインを奪うからこそ、ヒロインの相手役はかっこよく見えるのである。
では、今後、誰が朝ドラ親父を演じたらよいか? これまで親父役を多く演じている俳優では既視感がありすぎる。数々のドラマで暴れてきた北村一輝も初めての朝ドラで親父役だったからこそ、新鮮味があったのである。そう考えると人選は難しい。いろいろ考えた結果、音楽界にいい人材がいるのではないかと思い至った。