東京都内はラーメン店が毎月50店開店し、50店が閉店するとされる激戦地。この1年の間に誕生した名店の特徴をラーメン評論家の大崎裕史氏が説明する。
「昨年はシジミ、羊、牡蠣、鴨など出汁に使う食材の多様化が目立つ年でした。銀座にある『八五』(はちごう)のように画期的な手法で話題をさらった店も。他にない食材や斬新さ、他店との差別化で工夫を凝らす店が増え、価格が1000円を大きく超えても行列ができる店も相次いでいます」
進化は出汁や具材、手法だけにとどまらない。昨年11月下旬にオープンした「渋谷PARCO」に麺庄グループが出店した『Jikasei MENSHO』は、ラーメンの丼の概念を覆す縦型の器を登場させた。
「度肝を抜かれましたね。私は明治43(1910)年をラーメン元年と位置付けていますが、この画期的な縦型の“丼”は、日本のラーメン110年の歴史で初の試みではないでしょうか。今年もラーメン業界の進化から目が離せません」(大崎氏)
◆銀座 八五(はちごう)/2018年12月8日オープン
フランス料理の名匠として活躍した店主がラーメン界の常識を打ち破って生み出したのは、タレ(カエシ)を使わない新機軸のラーメン。渾身の1杯は、素材選びから盛り付けまでこだわり抜いた“作品”だ。
澄んだスープは、名古屋コーチンの丸鶏、鴨ガラ、鴨肉、イタヤ貝、ドライトマト、干し椎茸などでとった出汁に翌日、イタリア産生ハム・プロシュートを入れて煮込み塩味を加える。重層的な旨味が口の中に広がり、最後の一滴まで飲み干したくなる旨さ。具材、麺、香辛料も計算し尽くされている。
・住所:東京都中央区銀座3-14-2
・営業時間:昼11時~、夜17時~(スープがなくなり次第終了)
・休:水、第2、第4木
●撮影/岩本 朗 ●取材・文/上田千春
※週刊ポスト2020年1月31日号