毎年、多くの人が受ける健康診断。切り離せないのが「基準値」だ。血液検査や血圧検査の結果は、数値の一覧表として渡される。その表では各検査項目に定められた基準値に沿って、「正常」「要注意」「要精密検査」といった判定が下され、患者は表をまじまじと見つめて「思ったより良かった」「もうダメだ」などと一喜一憂してしまう。
だが数値だけに振り回されてはいけない。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「検査そのものは受診後の健康管理に役立つ有益なものですが、そこで示される基準値はあくまで“目安”だということを理解しておかなければいけません」
そもそも健康診断における基準値は、各臨床学会のガイドラインなどをもとに厚労省が定めている。健診後に生活習慣病改善のための保健指導が必要となるレベルは「保健指導判定値」、重症化防止のための治療が必要となるレベルは「受診勧奨判定値」として示される。
例えば高血圧については、上の血圧(収縮期)が130mmHg以上なら保健指導の対象、140mmHg以上なら受診勧奨となる。
「たとえば、親を脳卒中で亡くしている人は、血圧が140程度でも脳卒中リスクに注意したほうがいいでしょう。一方で、かつて血圧の基準値は『年齢+90』といわれ、現在でも家族歴のない高齢者の血圧が高い分には問題ないとする見方もあります。
薬で血圧をむやみに下げると血流が悪化して血栓ができやすくなり、脳梗塞が発生しやすくなるともされる。基準値は判断の目安として必要ではありますが、“絶対に正しいもの”ではありません。血圧が140でも医師が降圧剤を処方するケースもあれば、150でも投薬なしという判断はあるのです」(同前)