偏差値や大学の“ブランド”が受験校選択の判断基準だった時代はすでに過去のものとなり、大学入試をとりまく状況は今、大きく変わろうとしている。
1月18、19日に行われた“最後の”大学入試センター試験。図表を読み取って考察する問題や日常生活に絡めた出題が多くみられ、「“翌年”を先取りしたのでは」と分析する向きもある。
2021年から文科省は、大学入試大改革を旗印に「大学入学共通テスト」を開始する。国語と数学の記述式問題を導入することや、英検やTOEFLなどの英語民間試験を活用することを目玉として打ち出していた。
だが、その構想はほどなく空中分解する。「記述式の導入」、「英語民間試験活用」はいずれも公平性などが疑問視され、本番までわずか1年あまりの時点で実施見送りとなったのだ。
受験生からは「出題方法や仕組みの度重なる変更に不安だらけ」など非難の声が噴出した。ただでさえ神経質になりがちな受験生には、相当のストレスとなったはずだ。
大学受験をはじめとする教育問題に詳しい「大学通信」常務取締役の安田賢治さんも、今年の受験生に大いに同情している、と話す。
「まさに“気の毒”の一言です。来年の入試は記述式も英語民間試験の活用もなくなり、入試の名称が変わるだけ。ほぼセンター試験と同じような入試になるでしょう」
とはいえ「ならば問題ないのでは」と考えるのはそれこそ、大きな間違いだ。安田さんが続ける。
「最後のセンター試験組となる今年の受験生は、“超安定志向”といわれています。つまり、翌年になると受験の仕組みが大きく変更するため、前年に勉強した内容に加えて負担が増えることを見越し、絶対に浪人をしないよう『入りたい大学』ではなく『入れる大学』を選んでいるのです。これは1989年に共通一次試験が終了し、センター試験が導入される前年にもみられた傾向です」
ところが前述したように、浪人しても実質的に入試システムは変わらない。とはいえ、すでに願書を提出する時期に入っており、今さら志望校は変えにくい。
「上位校にチャレンジしたかった、と悔しい思いを持つ受験生も多いことでしょう。文科省は大風呂敷を広げましたが、結局何も変わらなかった。“大山鳴動して鼠一匹”とはまさにこのこと」(安田さん)
出身校は学歴として一生つきまとう部分もあるだけに、いつの時代でも納得のいく大学を目指したいと願う気持ちは変わらない。しかし、現在は“上位校”が必ずしも偏差値の高い大学や有名大学を指すわけではなくなってきている。
リクルートキャリア就職みらい研究所の所長を務める増本全さんはこんな指摘をする。
「たとえば近年、これまでは大量採用の代名詞だった多くの銀行が新卒採用数を絞っています。このように、かつて安泰とされてきた仕事でもAIに取って代わられる時代です。ものすごいスピードで世の中の仕組みやビジネス環境が変わるようにもなりました。そんな環境の中で“有名大学に行っておけば安心”ということではなくなりつつある。“今後必要とされる能力を学べるのはどの学部の、どの学科なのか。もっといえば、どの研究室なのか”と、受験生の側が真剣に考えるようになってきているのです」
※女性セブン2020年2月6日号