NHK大河ドラマの内容が発表されると、物語に関わる地方では必ず、それにちなんだお祭り騒ぎが巻き起こる。明智光秀が主人公となっている『麒麟がくる』でも同様の賑わいをみせているが、いつもと違う議論も起きている。というのも、通説では「美濃(岐阜県)出身」とされてきた光秀だが、ここにきて“新生誕地”に名乗りを上げる土地が現われた。
岐阜と隣接する滋賀県犬上郡多賀町佐目(さめ)──。この地には、光秀生誕の屋敷があったと語り継がれてきたという。
光秀の通称(十兵衛)を冠した「佐目十兵衛会」の会長・見津(けんつ)新吉氏(72)が語る。
「見津一族では、先祖代々『光秀はこの地で生まれ育った』と伝えられてきました。2019年1月には江戸時代の『淡海(おうみ)温故録』という史料に、光秀の数代前に明智家が美濃から多賀に移住したことを示す記述があると知りました。我々の口伝とも一致するので、美濃説を覆す可能性があると思っています」
見津氏らは、2019年3月に「佐目十兵衛会」を結成。屋敷跡に手作りの看板を設置し、茶屋や庭を整備するなど、観光客の呼び込みを始めた。
「他にも『神さん池』と呼ばれる井戸や、その水を神事に使った十二相神社など、光秀にゆかりがあったとされる場所があります。従来は“謀反人”という印象が強かった光秀ですが、大河を機に多賀町も観光客で盛り上がってくれればと期待しています」(見津氏)