健康診断を受診する際、一連の検査の基礎となるひとつが血圧検査だ。血圧が高いと血管がダメージを負いやすくなり、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)や心筋梗塞のリスクが増す。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」は、上の血圧(収縮期)が130mmHg以上を「正常高値血圧(血圧高め)」、140mmHg以上を「高血圧」と定めており、健康診断の基準値はこれに準じる。
だが、血圧検査で「異常なし」と診断されても過信は禁物だ。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「健康診断の基準値はあくまで目安に過ぎず、血圧130以下でも重病となるケースがあります。なかでも注意すべきは、血圧が正常で肥満もなく見た目も元気なのに、ある日突然発症する『隠れ脳梗塞』です」
隠れ脳梗塞は、自覚症状がないまま何度も発症し、CT検査やMRI検査で見つかるケースが多い。放置すると脳のいたる所で血管が詰まり、大きな発作を招く。前兆としては、「喋りにくくなる」「目まいが起こる」「ふらつく」といった症状が指摘される。
隠れ脳梗塞を起こす危険因子は「不整脈」だ。
「不整脈のうち、左心房の機能不全で生じる『心房細動』は、左心房にできた血栓が脳に飛んで脳梗塞を起こします。心房細動は高齢者ほど起こりやすいですが、血圧からは検知できません」(上医師)
他にも、糖尿病患者の半数以上に隠れ脳梗塞が認められたとの報告があるなど、血圧はあくまで脳梗塞リスクを測る数値のひとつに過ぎないのだ。その点を自覚しておく必要がある。
※週刊ポスト2020年2月7日号