360度どの角度から曲げても元の形に戻る、「折れない、ゆがまない“驚異の復元力”」がコンセプトの形状記憶メガネ『ケータイフレックス』(2万728円~)。2001年の発売以来、約65万本の累計販売数を誇る。このヒット商品のアイディアのもととなったのは、今や懐かしの“あの”通信機器の部品だった。
ビジョンメガネは全国に100店舗以上を展開するメガネ専門チェーンだ。メガネシリーズ『ケータイフレックス』を2001年に発売以降、全国の店舗で売れ続けている。
『ケータイフレックス』は携帯電話のアンテナの素材をもとに考えられた、壊れにくいメガネ。
発案したのは、アイディアマンとしてユニークな製品を開発してきた創業者で、彼は常日頃から商品のアイディアを考える日々を送っていた。
ある日、出張で新幹線に乗った時も、何かアイディアがないものかと考えていた。その時、触るともなしに触っていたのが携帯電話(ガラケー)のアンテナだった。そして、「このアンテナのしなりを利用したメガネが作れないか?」と、思いついた。
アンテナの素材を調べてみると、ニッケルとチタンを配合したNT合金だとわかった。そこで、この配合を調整して独自のしなりを編み出した。当時、この素材を使ってメガネを作るというのは、業界で初めての試みだった。一方で、つるに柔軟性を持たせると、そのゆがみによって塗装がはがれてしまうという問題が生じるため、よりきめ細かに、素材に密着するよう塗装を行った。
2001年に発売すると、またたく間に大ヒット。同社を代表する商品となった。ヒットとなった要因は、壊れにくさ。メガネをかけたまま寝てしまい、寝相が悪かったり寝返りを打ったりした時にメガネが壊れてしまうことがある。
また、子育て中の家庭では、小さな子供にメガネを壊されてしまうこともある。そんな悩みを、メガネに柔軟性をもたせることで解消したのだ。また、日頃メガネを使い続けていると、どうしてもつるが広がってしまうが、『ケータイフレックス』は形状記憶なので、広がりにくい。
発売後、幾度かリニューアルされてきたが、2019年9月のリニューアルでは、柔軟性と耐久性を高め、当初からのファンに認めてもらう品質を目指した。また、デザイン性の向上も目指した。レンズ部分の縦幅を少し大きめにした小顔効果が期待できる型や、丸みを持たせて柔らかな印象の表情に見せる型を新しく作るなどして、長く愛用できるようなデザインをラインアップした。
今回、取材に答えてくれた社長の安東晃一さんは、「おかげさまでリニューアル後も好評で、当初の計画の2倍の量を売り上げています。メガネ業界ではめずらしく、『ケータイフレックス』というフレームの名前を覚えてもらえているのがうれしいです。大胆に曲がることから、店頭ではお客さまとのコミュニケーションにも一役買ってくれています」と締めくくった。
※女性セブン2020年2月6日号