ニュースサイトのような見た目を装っていても、まとめサイト、トレンドブログと呼ばれるサイトは、出元が不確かな情報を確認もとらず、誤認しやすいように切り貼りしている。つまり信用に値しないのだが、SNSを経由して伝えられると、なぜか信じて拡散する人が少なくない。コロナウイルスによる新型肺炎にまつわるデマも同じように拡散され、自治体などが否定のアナウンスをする事態となった。対策が難しいと言われるまとめサイト運営者を相手どり、NHKが提訴したことが話題になっている。加害者として語られることが多いまとめサイトの運営者だが、実は被害者でもあるという矛盾した実態についてライターの森鷹久氏がレポートする。
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あの天下の公共放送「NHK」が、ネット上に数多存在する「まとめブログ」を訴えた──
この裁判は、大企業や政治家が一般人の声を封じるために威圧や報復目的で起こす「スラップ訴訟」ではない。まとめサイトの悪質さに、放送界の巨人でさえ、ついに堪忍袋の緒が切れた、ということだ。
「昨年発生した京都アニメーションの放火殺事件について、NHKが関与したかのような記事を掲載していたとして、NHKがまとめサイトの運営者に、損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを起こしました」
現役の在阪民放記者は驚きをもってこう話す。
ネットに掲載された内容をめぐる裁判は、まず発信者の連絡先を入手するために該当サイトのサーバ管理会社を相手に争い、そこで主張が認められて初めて、問題の掲載内容を発信した当事者と対峙できるという二段構えだ。まず発信者情報開示を目的とした裁判をサーバ管理会社と争い、次に発信者本人と掲載内容を争う。つまり、ひとつの案件で二度、裁判を行わねばならない。NHKも今回の件でサーバ管理会社を相手に裁判を起こし、2019年12月に情報開示を認める判決を得ていた。
当然だが、ひとつの事件で二度も裁判をするには時間も人手も、資金も必要なため、できれば避けたい事態なのは個人でも法人でも変わらない。にもかかわらずNHKが運営者の提訴に踏み切ったのは、「京アニ事件」に関してのネット上のデマは、はっきりいって「限度を超えていた」(前出の在阪記者)ためだという。
「まとめサイトに関しては、いくら運営側が“ネットの書き込みをまとめただけ”で何かの意見を表明する独自の表現ではないと釈明しても、それは通じないという判例も出ています。今回は、NHKスタッフの実名まで出して放火事件とNHKの関係を記事にしており、事実誤認を誘っているし、名誉毀損も甚だしい」(在阪民放記者)
筆者はこれまで「まとめサイト」について運営者に取材をし、その問題点を提示してきたつもりだ。ほとんどの運営者は、アフィリエイトプログラムによる収益を得るためにまとめサイトを運営していて、大半は思想や主張よりも「儲かれば良い」といったスタンスであった。さらに、ほぼ全てのまとめサイト運営者は「不労所得が得られる」などといった情報商材を購入し、特に工夫もせず商材に書かれていたマニュアル通りに運営を行うというお粗末ぶり。そのため、まとめサイトを運営しても大多数の人が月に数百円の利益すら出せず、そのうちサイトをそのまま放置する……というのが現実だった。