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心理士が指摘 新型肺炎対策に求められる「ゼロリスク効果」

北京国際空港でマスクを着用して歩く乗客(EPA=時事通信フォト)

北京国際空港でマスクを着用して歩く乗客(EPA=時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、日々感染者が増え続ける新型肺炎について考察。

 * * *
“「恐怖」はウイルスより早く感染する”、2011年に公開された米国映画『コンテイジョン』のキャッチコピーだ。今まさに、この映画さながらの事態が中国武漢を中心に起こりつつある。

 この映画を観たことがない人は、予告編を観てみるといい。医師役であるケイト・ウィンスレットが「手と口と鼻があれば、誰でも危険」と警告し、飛行機に乗っている乗客とともに「空港や港から世界中に広がる」という医師役のローレンス・フィッシュバーンの声が聞こえる。これだけでも今の新型肺炎の感染拡大を思い起こさせるには十分だ。

 映画では、香港に出張していたグウィネス・パルトロー演じるベスに風邪のような症状が現れ、帰国して2日後、自宅で痙攣を起こして病院に運ばれるが死亡してしまう。同じ頃、香港だけでなく世界のあちこちで感染者や死者が出始める。接触によって感染する強力な新種のウイルスがヒトからヒトへと拡散していく。致死率の高いウイルスにワクチンはなく、死者は増え続け、都市は封鎖され、人々は不安と恐怖から様々な行動を取る。パンデミックとして爆発的に感染するのはウイルスだけでない。情報が錯綜し人々がデマを現実と錯覚すれば、不安と恐怖も感染することが映画を観ればわかる。

 新型コロナウイルスの感染者や死者が日増しに増加し、中国当局の発表だと症状が出ない人からも感染するという。隠れた感染者がいて、それが「歩く感染源」になっているため封じ込めが難しいらしい。だが発生当時、病院にはかん口令が引かれ、習主席が声明を出したのはその5週間後。隠れた感染者がいて当然。インフルエンザより致死率が低いとはいえ、歩く感染源なんて言葉を聞いてしまうと、まるでホラーかオカルトだ。

 誰が保菌者なのかわからない。それが不安をかき立てる。武漢市は閉鎖されたが、市長は500万人超が市を離れているとコメントした。その人たちはいったいどこへ行ったのか? 中国政府は海外への団体旅行を禁止したが、すでに来日している中国人は多い。個人旅行でこれから来日する中国人もいるだろう。1月26日、日本では4人目の感染者が中国からのツアー客から見つかった。だがこのツアー自体は、今もまだ日本観光を続けているという。

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