中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは、世界中に感染者が拡がり、警戒が強まっている。
感染者の入国を未然に防ぐには、空港・海港での「検疫」が重要だ。しかし、日本政府の検疫体制が十分であるかは甚だ疑問だ。
新型ウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は21日、上海からの航空便に対する検疫強化を決定した。渡航者に対してサーモグラフィーを使った発熱の確認、体調不良の乗客への自己申告の呼びかけなどを実施している。
ただし、解熱剤を服用すればサーモグラフィーの異常検知も回避できてしまう。実際、新型肺炎の国内初患者は直前まで武漢市に滞在し発熱などの症状を訴えたが、日本への入国時には解熱剤を服用していたと報じられている。山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏(感染症学)が解説する。
「空港・海港では観光客が大挙すると確認しきれないうえ、スタッフの検疫の技量にもバラつきがある。そもそもサーモグラフィーでは、発熱の症状が出ていないがウイルスを保持している人を見つけられません。
そうした中で、乗客の善意の申告に任せていては、検疫には限界があると言わざるを得ないでしょう」
新型肺炎の予防措置として、北朝鮮当局が22日、中国からの観光客の受け入れを全面停止したことが明らかになった。同国は2003年のSARS、2014年のエボラ出血熱の流行時にも外国人観光客の受け入れを停止している。
日本が同じことをするわけにはいかないが、“迅速な判断”だけは見習ったほうがよさそうだ。
※週刊ポスト2020年2月7日号