芸能

NHKドラマ10は秀作揃い 今期のシシド・カフカもキレキレ

番組公式HPより

 ドラマウォッチャーを自認する人であれば、放送局ごとのドラマ枠についてきっと一家言持っているはずだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 何という奇妙な迫力を放つ作品か? 常識の枠をはみ出すインパクト大! NHK「ドラマ10」枠で放送されている『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』(金曜午後10時)は役者好き・芝居好き・映像好きにはたまらない不可思議な魅力を放っています。原作は人気ミステリー作家・若竹七海氏の「女探偵・葉村晶シリーズ」。

 物語は……クールな女探偵が次々に事件に遭遇する展開。主人公ハムラアキラ(葉村晶)を演じるのは、ドラム演奏者・女優として活躍するシシド・カフカです。アキラは「白熊探偵社」の探偵で、その生活は質素なアパート暮らし、持ち物はほとんどなくて服装はモノトーンで趣味はミステリーの読書。

 とにかく、この主人公のハードボイルドぶりが生半可ではない。前髪をバサリと前に下ろし化粧っけゼロ、ぶっきらぼうでニコリともしない淡々とした口調。情に流れない切れ味の良さ。シシドさんご本人も「晶は足ぐせの悪い女」と語っているだけあって、男のように足を大きく開いて座る。ドラマーとしての演奏風景ともぴたり重なるキャラ。危機となれば相手の股間を蹴って逃げるあたりはハードロッカー。

 独白もいい。トツトツと語る口調が乾いていて都会の砂漠を思わせる。従来「ハードボイルド探偵」といえば、男性が演じるのがお定まりでしたが、その幅をぐぐっと広げてくれた。という意味でも今後のドラマ界に大きく貢献しそうです。

 一方、シシドさんのキレキレの演技を受ける役者たちも光っている。例えば第一話、姉の珠洲役を演じたMEGUMIの「はすっぱな女ぶり」は超一級。この人にしか演じられない自堕落さ、崩れ具合が実にいい味を出してしました。そして、付きまとう謎の男には村上淳が。またまたダークでやさぐれ感がはまりすぎのキャスティングです。

 エリートの岡田警視役は原作にないオリジナルのキャラクターですが、演じる間宮祥太朗さんとシシドさんの掛け合いのテンポは心地よく、セリフも無駄なく練り上げられています。その上、カメラワークも独特で斬新、音楽もセットも小道具も凝りに凝っている。

 ……と褒めたくなる点ばかりですが、何よりも驚かされるのは「NHK総合チャンネル 金曜夜10時」、まさしく黄金時間帯に正々堂々とこんな風変わりなアングラドラマが放送されていることでしょう。「風変わり」というのはもちろん最大の褒め言葉。定型の枠から大胆に外れて跳ねていく、作品性の豊かなドラマという意味です。

 さかのぼって眺めてみると「ドラマ10」という枠は、実に攻めの姿勢を見せている。なぜならこの枠から生まれ出てきたドラマの数々が、全てとは言いませんが、一度見たら終わりでなく何度も咀嚼したくなる秀作揃いだからです。

関連記事

トピックス

長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
第一子誕生の大谷翔平、広告出演オファー殺到でスポンサー収入200億円突破も ベビー関連・ファミリー関連企業から熱視線、争奪戦早くも開始か 
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
金メダル級の演技(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』で“韋駄天おのぶ”を演じる今田美桜の俊足秘話 「元陸上部で中学校の運動会ではリレーの選手に」、ヒロイン選考オーディションでは「走りのテスト」も
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン